君へのSong (ページ24)

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打ち上げの会場は薄暗い雰囲気のバーみたいなところで、人で溢れかえっていた。

正門さんはグラスを片手に一人一人に挨拶に回っている。

「A、酒飲めるん？」

「いや、飲んだことないです」

まだ19歳のわたしに大吾さんは強制的にストローをさした烏龍茶を渡してくれたけれど、

「姉ちゃん、正門ちゃんのファン？」

代わる代わるに出演者がやってきては、

「飲もうや」

とお酒を渡してくる。

「すいません。こいつ未成年なんでー！」

その度に大吾さんは、スーパーバイトモードの営業スマイルとトーク術でわたしを守ってくれた。

「大吾さんすごいですね。ありがとうございます」

なんとなく居心地が悪くて思わずピタッと寄り添ったままお礼を言う。

「いや、おれも正直ようわかってへんかった。バンドマンの世界って大変そうやな」

大吾さんはほとんど口をつけていないお酒を片手に険しい顔に戻っている。

「西畑さんちょっとお話いい？」

気がつくと彩月さんが立っていた。

「あー、今度じゃダメですか？」

大吾さんはダルそうに答える。

「ごめんね、わたしももう帰らないといけないし」

大吾さんが不安そうにわたしを見る。

わたしは人の少なそうな場所を見つけて、

「大丈夫、あっちに避難してます」

と移動した。

彩月さん、大吾さんに話ってなんなんやろ…

「お姉ちゃん、正門ちゃんの女なん？あの小さい子の女なん？」

避難したもののまた別の男の人たちが近づいてきた。

「いや、どっちでもないんですけど…」

「まあ、乾杯しようや」

みんなもう出来上がってるみたいで顔が赤い。

烏龍茶が取り上げられて、代わりにグラスを渡される。

並々に注がれるなんか強そうなお酒…

どうしよう…

「あの…」

「かんぱーい」

手元にグラスが集まってきて、ガチャンと音を立てた。

「お姉ちゃんそんなまずくないって」

男の人の腕が私のグラスを口元に近づける。

「すいません、俺も入れてください」

グラスから顔を上げると正門さんがいた。

「もっかい音頭いいっすか？」

正門さんはぺこぺこ頭を下げながら、

さっと私のグラスを取り上げて、

透明な液体の入ったグラスに交換した。

もう真っ赤な顔はきっとお酒に強くないんだとはっきりわかる。

わたしのお酒を戸惑いなく飲み干す正門さんに胸が痛い。

その後も正門さんは片時もわたしのそばを離れず、代わりにお酒を飲んでくれた。