†狂ったアナタは王子様†【実.況.者】

____…第7話…____ ページ7

朝。フジさんとキヨが喧嘩をして、一日経った。


廊下を歩いていると、見慣れたシルエットがあった。



「国王。おはようございます。」

「んん…?あっ、秘書……おはよう………」



本当に、早起きになったな。国王も。

以前までは、昼過ぎまで寝ていたのに、最近は、午前中に起きるようになった。


フラフラしていて眠そうだけど。




すると、右からフジさん、左からキヨが歩いて来た。


そして、私達の前で止まった。



「ヒラ、緑川さん、おはよう。」

「A、国王、おはよう。」



輝かしく笑った二人は、お互いに挨拶はせず、

フジさんは、そのままキヨとすれ違い、歩いて行ってしまった。




「おはよう!執事!大臣!!」



重い空気の中、元気に挨拶する国王と、目を見開いたまま下を向いて固まるキヨ。


すると、国王は、私の腕を掴み、クルッと回れ右をした。



「……何これ?」



笑顔のまま、顔を近付けて、キヨに聞こえないように話す国王。

少しドキドキしているのは内緒。




「え、えーとですね……昨日、キヨが、フジさんの大事なお花を壊したらしくて………」


「あー…なるほど。」




どうしよう、と、二人で考えていると、声をかけられた。


「あ、あの…今、鬼みたいな形相のフジさんが歩いてらっしゃったのですが、何か知っていますか…?」


苦笑いのつわはすさんだった。



いつも微笑んでいる優しいお母さんのフジさんが、鬼みたいな顔で歩いていたら、

誰でも怖いだろう。




「…キヨ。フジさんに謝ったら?」


「俺は悪くねぇ。」



私の言葉を遮って、キヨはズカズカ歩いて行ってしまった。




「喧嘩でもなさったんですか…?」


心配そうにキヨを見るつわはすさんに、苦笑いで頷いた。



「国王。あの二人を仲直りさせられるのは、貴方しかいません。」

「えっ、ええ…。無茶言わないでよ…。」



困った笑顔の国王。




「いやいや!!そこを頑張って下さいよ!!貴方、国の王でしょ!?」



いっつも、一緒にいるのが当たり前だったフジさんとキヨが、今、離れている。


喧嘩しても、なんだかんだ心配し合ったり、笑って合っていたりした二人を思い出して、胸が痛い。




「…無理なものは無理。大体、その場にいたのはきみでしょ?きみがあの二人を仲直りさせたら?」


いきなり言われたので、驚いた。






「なんでも頼るの、君のよくない癖だよ。」






冷たく、ニッコリ笑って言われた。




………なに、それ。

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