____…第11話…____ ページ11
彼女の手首を、折れそうなくらい強く握る。
それでも、目の前の緑川さんは、驚いた顔のまま。表情一つ変えない。
「…まずね。緑川さんは、いっつも無表情で、絶対に笑ったり泣いたりしないの。
なのに、今は、微笑んだり、涙目になったり。」
「ち、違うんです!フジさんと話してたら、なんか安心しちゃって………」
慌てて顔を横に振る彼女。
無駄だよ。いくら否定したって。確実な証拠があるんだから。
「…さっき、俺がお前に出した飲み物、覚えてる?」
不思議そうに表情を歪めた彼女は、ゆっくり口を開いた。
「………コーヒー…ですけど………」
「緑川さんはね、コーヒーが飲めないんだよ。」
そう言うと、彼女は大きく目を開けた。
…偽物確定、かな。
そして、静かになった図書館。
自然と、手首を掴む力を強くする。
目を見開いたまま、固まっている彼女。
___突然の出来事だった。
目の前の彼女は、真っ黒に歪んだ笑顔を見せた。
『怖い』
人の笑顔を見て怖いと思ったのは、ヒラ以来だった。
すると、俺の顔の横から、何かが勢いよく飛んできた。
速すぎて対応出来ず、そのまま、図書館の扉まで吹っ飛ばされた。
扉に叩きつけられて、二秒後。
あの人に、物凄い威力で蹴り飛ばされたのだと理解した。
叩きつけられた背中が痛くて、視界がボヤける。
「へー。緑川ちゃん、コーヒー飲めないの?そんな情報、こっちに届いてないけどなー。」
つま先を、トントンと二回鳴らして、笑う。
ビリビリッと緑川さんの服を破き、顔のマスクを取った。
見覚えのある顔だった。
「…お前……この前…庭にいた、不審者………」
(「†狂った国の王子様†」第55話 参照)
青一色のパーカーに、薄茶色の半ズボン、眼鏡の奥の悪戯っぽい瞳。
この前の……
「おー。覚えててくれたの。そうそう。あの時の不審者だよ。」
そして、俺の前にしゃがんだ。
「うちの国王がね?フジくんに一目惚れしちゃったらしいんだよねー。」
…え………ホ、モ?
「くくっ……まあ、今回の僕達の作戦は、『狂気王国の執事、フジさんを誘拐する!!』でーす。」
は?と言おうとしたが、さっき、
この人の、人間とは思えない速さと威力の蹴りをくらったため、目を開けるだけで精一杯。
「狂気王国なんて怖い国にいないで、僕らの平和王国へおいで?」
歪んだ笑顔を見たのを最後に、
意識が途絶えた。
____…第12話…____→←____…第10話…____
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あみ - 本編最高すぎてこちらも読ませていただきましたが、、、いや本当に神です以上！！(?)本当に好みというかなんというか。ヒ.ジ.キ.の小説で一番好きかもしれません。こ.ーす.け.をのけ者扱いにしているような小説が多いイメージがあったので。この小説が本当大好きです！ (2021年7月25日 14時) (
レス) id: 2c5fd51ba4 (このIDを非表示/違反報告)
みー - すごく、すごく良かったですっっっっっ...！(大号泣) (2019年11月22日 7時) (レス) id: 7c0d6b05b3 (このIDを非表示/違反報告)
かえで@utaitelove(プロフ) - もう最高です…！！感動したと思ったら次はキュンキュンしてほんと私の心臓どうしてくれるんですか！影葉さん最高です( ；∀；)他の作品も全部読ませて頂きましたがほんとに天才ですね！？これからも頑張ってください (2019年1月1日 21時) (レス) id: a0615ac09b (このIDを非表示/違反報告)
アンジ* - 今になってもずっと読んでます！狂った国の王子様、こーすけが出てきたシーンで大号泣してしまいました。番外編、ぜひ読みたいです！影葉さん、感動をありがとうございました！ (2018年8月20日 20時) (レス) id: a0d4f82c90 (このIDを非表示/違反報告)
夜猫 - ヒラ可愛い！死にそう！ (2018年2月3日 5時) (レス) id: c27b932811 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：影葉
| 作成日時：2015年12月5日 14時
