30. 現実。 ページ32
午後イチのフライトを控えた潤くんを残し、今日はあがりだった俺と相葉さんで、大野さんを病院に連れていく。
その後応急処置のため立ち寄った医務室で見た傷は想像以上に深く、なかなか止まらない血は、もともと貧血気味の大野さんを苦しめるのに充分だった。
車を飛ばした先の病院で大野さんは、縫合処置をうけ、今は鉄剤の点滴をしながら眠っている。
あのラウンジで大野さんは、１度も顔を上げなかった。
痛みが強かったのだろう、そんな余裕もなかったのかもしれないが、俺は本当に、心のそこから、“顔をあげなくてよかった ”と思う。
だって...
「ねぇ...あれ、どう意味... なのかな。」
「...ん？」
待合室の椅子。なんとなく沈んだ空気をそのままに、俺は聞いた。
「こんな所で働いてる方が迷惑とか、櫻井さんがとんだお荷物を持ち込んだ...とか...」
「うん...」
黙っている相葉さん。
確かに、俺も思っていた。
ディスパッチャーは、俺たちがフライト中も、飛行プランに変更を要するような事態がおこれば、無線で連絡を取り合いながらそのプランを修正する。
相手の言うことが分かっても、伝えることが出来なければ、多分、難しい職種、だと思う。
だけど、大野さんは、そんなこと微塵も感じさせないくらい、仕事が出来る人、だと思う。
多分、申し訳ないけど、あそこにいる人達の、誰よりも。
俺は、みんながマルのように、大野さんを暖かくサポートしていると思い込んでいた。
あの時見た、甘く、優雅な、優しい空間に、誰もが癒されてるものだと、思っていた。
「迷惑だ、お荷物だ」
なんて言っている人がいるなんてこと、想像もしていなかった。
大野さんを取り巻く環境は、もしかしたら俺が想像するよりも、厳しいものなのかも知れない。そんな環境を作っている誰かにも、そして、こんな事態を目の当たりにしないと、気付かなかった俺も、その“ 誰か ”なっているのかもしれないと思うと、自分への怒りと苛立ちが込み上げてくる。
それに、櫻井さんが持ち込んだって...
「しょーちゃんね。外資系からのヘッドハンティングなの。」
「そうなの？」
聞けば優秀なパイロットが揃うと有名な航空会社の、エリートパイロット、だったらしい。
「昔はね、すんごい、人当たりも付き合いもよかったんだ。でも... 」
遠い目をした、相葉さんが言う。
「なんかね、変わらないようだけど、変わっちゃった。あんな風な、人を信じてないような目、しなかったもん.... 」
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櫻宮 - 大野さんの繊細な心と翔くんの強い気持ち…それを優しく見守る3人が何だか"ほっこり"して凄く好きです！mioさんのお話もっと読みたいです！！ (2019年11月7日 12時) (
レス) id: 95d5f07b44 (このIDを非表示/違反報告)
リカ(プロフ) - こんにちは。先日、旅行に行って参りました。機内から空を見ていたら、もう一度物語が読みたくなりお邪魔させていただいています。2人の物語、5人の物語、幸せな気持ちになります。 (2017年9月4日 22時) (レス) id: c3477e2eb7 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 沙羅さん» 沙羅さん。コメントありがとうございます。ふあふあ大野さん、感じて頂けて嬉しいです☆これからふあふあじゃない彼も、しょーくんとの揺るぎなさも、お届け出来たらなと思います！ラストシーズンまでぜひ、お付き合い頂けたら嬉しいです(^^)よろしくお願いしますっ♪ (2015年3月18日 9時) (レス) id: b1673f9bd6 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 大野さんのあのふあふあかん最高です！櫻井さんの過保護な感じにきゅっときますね、笑色んな関係が見え隠れしてて読むのとてもわくわくします (2015年3月17日 10時) (レス) id: ca60bde7d3 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - えりんこさん» えりんこさん♪お返事遅くなりすみません(;_;)ありがとうございます。嬉しいな。麗しの青さんだなんて、ほんとに嬉しいです。えりんこさんのお話の、凛とした青さんも、私大好きです！なかなかうまく表現できなくて困っていますが、また読みに来て下さったら嬉しいです (2014年11月20日 17時) (レス) id: b1673f9bd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mio
| 作成日時：2014年6月7日 22時
