anytime （渡辺） (ページ20)

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『重…い…… 』

半分夢の中状態のなべを引きずりながら

マンションのロビーを歩く。

タクシーの運転手さんに1人で連れて帰れる？ってめちゃめちゃ心配された。

『この前、加減も分からず飲むのは馬鹿だって言ってたくせに自分も変わんないじゃん』

『てかそもそもあの喧嘩も最初にキレてきたのなべだからね、聞いてないと思うけど』

ブツブツ文句を言ってみるけど全く反応なし。

こういう時にまとめて文句言っとこ。

普段だったらすぐ言い返されるし。

なんとか部屋まで連れて帰ってこれた。

もう私の身体はボロボロだけど。

リビングの電気を片手で着けて寝室の扉を開く。

ほぼなべを投げ捨てる感じでベッドに寝かせる。

本当に疲れた……あんなにマンションの下から

なべの部屋までが遠く感じたことない。

『なべ！私帰るけど！大丈夫？』

なべの身体を少し揺さぶりながら声をかける。

「んっ……水… 」

顔を赤くしたなべが目は閉じたまま鈍い声でそう呟いた。

『水？まって、取りに行ってくる』

私は寝室の扉の方に体の向きを変えて歩き出そうとした。

「やっぱいい」

歩き始めようとしたと同時になべがそう呟いた。

不思議に思った私は振り返ろうとした、

『ん？』

その瞬間、腕を掴まれて視界が揺れて

なべは私の腕を掴んで自分の方に引き寄せた。

状況を理解できないまま私はベットの中に引きずり込まれた。

『え、ちょっと！なべ？』

なべは私の言葉を無視して私の背中に腕を回した。

これってどう見ても私がなべに抱きしめられてる図。

火照ったなべの体温が伝わってきて

相手はなべなのにドキドキしてしまう。

『 ………なべ？聞いてる？』

私の目線にはちょうどなべの胸のあたりで

なべがどんな表情をしているのかは分からない。

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