anytime （渡辺） (ページ2)

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やっと捕まったタクシーに2人で乗り込み

運転手さんに行き先を告げるとタクシーは走り出した。

『何で別れたの？』

「めんどくさかったから」

『また？いつもじゃん』

なべはモテるし彼女もできるのに

なぜか全然長続きしない。

彼女作るくせにすぐめんどくさいっていう理由だけで別れるし

遊びたいだけなのかなんなのか知らないけど

ほんと顔はかっこいいのにもったいない。

『彼女、泣いてなかった？』

「泣いてたから尚更、だるくなった」

『サイテー』

「はいはい、もうこの話おわり」

そして、大体、都合が悪くなったら話逸らすし。

本当に分かりやすいよね。

他愛無い話をしているといつの間にか

私のマンションに着いていた。

少し冷たい風を肌に感じて寒いなーなんて

思いながらタクシーを降りた。

『今日はありがと。ふっかさんとかこーじくんとか涼太くんにもよろしく伝えてね』

「おー、よろしくって何を(笑) 」

『ご飯行こうねって意味となべのお世話よろしくって意味』

「は、俺が世話してる側じゃん、」

『とりあえずそろぼち3人にも会いたいもん』

「気が向いたらな、また連絡するわ」

『うん、じゃあまたね、おやすみ』

タクシーの窓が閉まり走り出す。

なべは馬鹿で子供で我が儘だけど優しい。

今日だって私が明日朝早いから

こんな早く送ってくれたんだろうなって。

なべは言葉にはあんまりしてくれないけど

不器用な優しさをたまに感じる。

まあデリカシーない時もあるけど。

そして人一倍努力家で決して努力は顔には出さないし

しんどい時もしんどいなんて言わない。

デビューまでの長い間

きっと辛いことだって沢山あったはずなのに

私の前で弱音を吐いたのはたった一回だけ。

そんななべを尊敬してるし友達として好きだ。

私はパンプスを脱いで洗面台に直行して

化粧を落とす。お風呂に湯を溜めている間にスマホをチェックする。

なべおやすみ

相変わらず短いなべのメッセージにスタンプで返信してスマホを閉じた。

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