鈴の音色 2【HQ 西谷夕】 (ページ29)

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第72話ページ29

雪side

Aが編入して来た日。誰もが魅了したであろう凛とした、真っ直ぐ前を見つめるその姿と顔立ち。同い年とは思えない程の落ち着きと振舞い。学級委員という立場もあったけど、積極的に声を掛けた。
でも、Aはあまり周りと関わろうとはしなかった。いつも遠くを見て何かを考えていた。

雪「私もAの事はよく知らないし、聞き出す勇気もない。」

きっと、知られたくない事。

雪「だからいつか、Aから話してくれるの待ってようって思った。」

『…』

雪「あとさ、前にも言ったけど表情柔らかくなったし、話すようになったから嬉しかった！」

『……そんなに変わった？』

雪「多分、気づいてない人の方が多いと思うけどね～」

『よく、気が付いたね。』

雪「誰が一番近くにいたと思ってんのよ！」

『…そうね。』

ほらね。やっぱり、少し笑った。
整った横顔が、より一層綺麗だった。
羨ましいくらい綺麗で、哀しそうな…

雪「あー、あとね。西谷なんだけど…」

『何でそこで西谷君が出てくるの？』

雪「まぁまぁ！」

西谷は分かりやすいからな～♪
むしろAにも何かしら勘づかれているとは思うけど。

雪「な～んか悩みがあるみたいなんだけど、私たちに話してくれないからAがさりげなく聞き出して欲しいの！」

『は…私が？』

雪「私たちが聞いたところで「なんもね～よ！」とか言って誤魔化されるのがオチなの！」

いつもあんなんだから、人に頼るとか迷惑掛けるからとか、余計な事を考えて自分を抑え込むんだろうな。

『……まぁ、努力するわ。』

私だって、Aの事を知りたい。でもきっと西谷が一番知りたがっている。

雪「頼んだぞ！」

いつかAの口から直接聞けるその日まで、私は待ってるから。