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yb.
今の身体に馴染じむにつれ、外出許可の数も増えていった。
何度目かの『帰省』の時。
母親が差し出してきたそれに、俺は全く覚えがなくて。
中身を取り出しかえすがえす眺めても、何の欠片も出てこない。
細目チェーンのシンプルなブレスレット。飾り気も何もない。
……誰のものだろう?
なぜ自宅に届いたのだろう。
考えても答えは出ず。
思い出せず。
結局引き出しにしまい込んだまま、忘れていたのだけれど。
「俺とお前の…だったんだな」
何で俺は、
「肝心な所だと思うのに…思い出せなくてごめん、」
「多分…だけど」
「…うん?」
被せ気味に遮ってきた伊野尾が、ゆっくり話し出す。
「おれたち進路が違ってて…旅行から帰ったら、当分離れる事が決まってたんだ。だから…」
離れる…進路が違う。ヒントのワードを貰い、頑なに閉まってた引き出しが、スッと開いた。
「何か…何処かで繋がってたくて」
そう続けると、黙り込む伊野尾。
不思議だ。
伊野尾の向こうに、少し幼い伊野尾が見える。これ、俺が覚えてるお前?
「キザだって思ったけど。お前はきっと喜んでくれるって、変な確信持っててさ…」
一度目を閉じ、次に開けた時。
『昔の伊野尾』はもういなくて、でっかい目を零れんばかりに見開いた今の伊野尾が、俺を凝視してる。
すげぇ。嘘みたいだ。きっかけってのはこんな風に出てくるものなのか。
「いのお…?」
あんまり反応がないから、返事を待たずぎゅうっと抱き締めた。一拍遅れてジタバタ暴れるも、構わず囲ってればやがて大人しくなる。
あ…これもなんか、覚えてるかも。
「照れてる?」
タイミングを見て囁けば、耳まで染まる白い肌。
「なぁ…」
「知るか…っんぅ…」
赤い耳たぶを堪らず
「照れてるだけだよな…そうだろ」
衝動のまま噛み付いた唇。奥に引っ込みたがる舌に迷わず絡み、小さな抵抗も全て封じ込めた。
かくりと伊野尾の膝が崩れるまで。
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夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» 黄色いうさぎさまはじめまして☺️わぁ、何度も読んで頂いてるんですね☺️ぉ、おおぅ旗部屋リピートも(恥(/▽\)キャッ)💦こちらこそありがとうございます😆励みになります💕 (2022年9月14日 12時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
黄色いうさぎ(プロフ) - こんばんは、始めまして夏夢さん。夏夢さんの作品を定期的に読み直しています。回路…や尾行シリーズも好きです。旗部屋も😁どれも素敵なお話達、やさぐれた私の心を癒やしてもらってます。ありがとうございます (2022年9月13日 22時) (レス) id: ef1652ec47 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ちぃちゃんさん» ちぃちゃんさま、拙話を寛ぎのお供にだなんて、恐縮でございます😆ありがとうございます(照)💕子狼くん、またお目見えしました時は遊びにきてくださいねー😊💕 (2022年5月3日 16時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - 連休で時間がたっぷりあるのでシリーズ読み返していて、「回路…」の薮伊野にキュンときました。 薮伊野大好きですが子狼くん達のお話も大好きで読み返してはやっぱり作者さんの紡ぐお話大好きだなと改めて思いました。 (2022年5月2日 20時) (レス) id: bdaf2a3994 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ましろさん» 食べられてしまいましたねー(^-^;そうなんですよ、お話の肝なのにさくっとし過ぎてしまいまして…これは覗き見案件なんでしょーか( ̄▽ ̄;) (2021年2月19日 20時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏夢 | 作成日時:2020年3月20日 23時