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ちょっと時間を巻き戻し。
kota.
「まっ!……まじょ……?」
二階に駆け込んで、ストップを掛ける。
煩くしたら怒られるからなっ。
大声も厳禁。
すーはーと深呼吸…よしっ。
「…ま……じゃねぇ、ケイ?」
そおっとドアノブを回して、中を伺った。
「入っていいよ」
ビックリしてピョンと跳ねた。真っ暗だけど、夜目が利く俺に問題はない。
「明かり…いるか?」
「小さいの欲しいかな」
わかった、と答えて、ベッドの側にあるランプに火を入れる。炎の出方を調整して、ケイが頷いた所で止めた。
…どうしよう。
勢い込んで来たはいいけど、お茶のひとつも持ってくれば良かった。
「コータ」
「っ、なんだ?何かいる?ぁ、蜂蜜湯、作ってるかもっ」
さっきユーヤが言ってたのを思い出した!持って来よっ。
「お待ち、コータ」
「へっ?」
踵を返しかけ、振り向いた。
透けるような肌が目を奪う。ゆらゆらと揺れる明かりの側で、いっそ危うい翳りの青の瞳に見詰められ、俺は動けなくなる。
「手を」
「手?…こう?」
差し出された手のひらに重ねれば、目を閉じた魔女がやがてホウッと息をついた。
「よかった…」
よかったって…何が?
「っ…」
「けいっ?痛い?」
眉を潜めた顔が辛そうで不安になる。だっておれ、いつでも涼しそうで偉そうなカオしか知らないんだよ。
「出てるよ、耳」
へ?あれっ?いつ出た??やば、尻尾も出てんじゃん!
「心配ないよ…ちょっと力使っただけだから」
必死にしまってると、くすりと笑い声がして首を傾げた。
力?いつ?
「ゃ、そんなの使ったらだめだろ!…そうだっ」
さっきしまったばっかだけどいいや!
ポフッと狼に戻ると、半ば無理矢理潜り込む。
「コータ?」
『ユーヤはまだ何か話してるから、俺の毛皮貸してやるっ。ほ、ほらこーゆー時ってあったかいのがいいんだろ?』
背中を向けて落ち着くと、クスクス笑う気配があって。
やがてそっと、腕が回ってきて。その儚さに、込み上げるものをグッと堪えた。
「大きくなったねぇ…」
『当たり前だっ…ケイ?』
あっという間に穏やかな寝息が聞こえてきたから、俺もゆるゆると力を抜く。
「はぁ…」
この気持ち…何て呼ぶんだろ。ヒカに感じるそわそわやどきどきと全然違う。
安心?
セツナイ?
すぐには思い出せなくなった、あの温もりに似てる?
背中越しでも判る、熱い身体と浅い息遣いを感じながら目を閉じた。
泣きたくなる気持ちは見ないフリで。
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夏夢(プロフ) - 黄色いうさぎさん» 黄色いうさぎさまはじめまして☺️わぁ、何度も読んで頂いてるんですね☺️ぉ、おおぅ旗部屋リピートも(恥(/▽\)キャッ)💦こちらこそありがとうございます😆励みになります💕 (2022年9月14日 12時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
黄色いうさぎ(プロフ) - こんばんは、始めまして夏夢さん。夏夢さんの作品を定期的に読み直しています。回路…や尾行シリーズも好きです。旗部屋も😁どれも素敵なお話達、やさぐれた私の心を癒やしてもらってます。ありがとうございます (2022年9月13日 22時) (レス) id: ef1652ec47 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ちぃちゃんさん» ちぃちゃんさま、拙話を寛ぎのお供にだなんて、恐縮でございます😆ありがとうございます(照)💕子狼くん、またお目見えしました時は遊びにきてくださいねー😊💕 (2022年5月3日 16時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - 連休で時間がたっぷりあるのでシリーズ読み返していて、「回路…」の薮伊野にキュンときました。 薮伊野大好きですが子狼くん達のお話も大好きで読み返してはやっぱり作者さんの紡ぐお話大好きだなと改めて思いました。 (2022年5月2日 20時) (レス) id: bdaf2a3994 (このIDを非表示/違反報告)
夏夢(プロフ) - ましろさん» 食べられてしまいましたねー(^-^;そうなんですよ、お話の肝なのにさくっとし過ぎてしまいまして…これは覗き見案件なんでしょーか( ̄▽ ̄;) (2021年2月19日 20時) (レス) id: 5f3d433f1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏夢 | 作成日時:2020年3月20日 23時