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「うん、どうしたの?」
「…えっと、あのな…」
彼女は心配そうな顔をして俺の手を握った。
俺は本気でAが好きだ。ここまで真摯に向き合ってくれる彼女に、自分も本気で向き合っていこうと決めたのに。
男女関係なんてフィクションだ。
つい去年までの俺の思考を、それに至った経緯を話したとしてもし彼女に拒絶されたらと考えると、どうしても言い出せなかった。でもこの事を隠して彼女と残りの時間を過ごすのは駄目だ。中途半端な気持ちでは付き合っていけない。
だけど…
「シッマ」
「…ん?」
「無理しないでいいよ。まだ心の準備、出来てないんでしょ?」
彼女はそう言うとこちらに身を寄せて、頭を俺の肩に乗せた。A…と呟いた俺の声に彼女は先程までとは違い、静かな声色で話す。
「まだ…まだ、私たちに時間はあるから。焦らなくて、いいよ。シッマがちゃんと、伝えられる時まで、待ってるから」
彼女は何もかもを見透かしたようだった。
ついさっきまでの焦りが段々と落ち着いて、代わりに心臓が掴まれたように苦しくなって、俺はAの手を少しだけ強く握りしめた。
「…すまん、ほんまに、俺…」
「いいんだよ。まぁ…別れ話じゃないなら、ね」
「なっ!?ちゃうに決まってるやろ!!そんなん死んでも手放してやらんわ!!!」
「ふふっ、そっか。なんか、それ、プロポーズみたい」
「えっ…」
茶化すように笑う彼女は少し伏せ目がちに俺を見てそう言った。プロポーズ、なんて俺にとっては遠い言葉だったが、確かに今のはそれじみた色が含まれている気もしてしまって、思わず顔が熱くなる。
「かわいい、シッマ」
「…おまっ………マジで…」
ガヤガヤと人の数が多くなってきた。もう花火の時間が迫っているのだろう。
かわいい、なんて反応に困る言葉に俺は彼女と反対側を向いて花火を待った。
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なーや(プロフ) - こちらでもコメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです(泣)まだ夏の話ですけど終わりまで見て下さい笑m(_ _)m (2021年4月10日 22時) (レス) id: 8296248943 (このIDを非表示/違反報告)
相馬(プロフ) - 更新されると、まだ終わらないっておっしゃってましたけど、あ…また日付が進んでいく…と思ってしんどくなります笑毎日更新されるのが楽しみです!! (2021年4月10日 20時) (レス) id: 7501b9a05e (このIDを非表示/違反報告)
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