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彼女の返答を待たずに、言葉を続ける。
今しかないと思った。
「一年の夏頃から…なんやけど。ずっと…Aのこと、ええなって思ってたんや。最初は見てるだけで充分やった。でも、春になって、たまたま話す機会が出来て、それからよく話すようになって…見てるだけじゃ嫌になってん」
ぐっと、彼女の手を強く握る。その手は振りほどかれずに、それどころか、Aは先の言葉を促すようにその手を握り返してくれる。俺らしくもなく、目頭が熱くなっていた。
「…俺だって、Aと毎日話したいし、笑った顔が見たいし…でもそれだけじゃないんや。こうやって手も繋ぎたいし、抱きしめたい、し…Aの、ずっと………そばに居たいんや」
Aは今にも泣きそうな顔をして言葉を言い淀んでいた。何かを伝えようとしてくれているのは分かる。急かさずに待っていると、か細い声で彼女は首を振った。
「で、もわたし……私、じゃ、だめだよ」
「なんで?」
「だって、わたし…来年には、しんじゃうんだよ…?もしかしたら、半年後には、死ななくても、からだが、うごかなく、なる、かもしれない…そしたら、シッマに、迷惑かけちゃう…」
やはり、彼女が俺から距離を取ろうとしていたのはそういうことだったらしい。
でも、俺にとってはそんなの今更だ。それを知ってしまったからこそ踏み出そうと決めたのだから、迷惑だなんて微塵も思わない。
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なーや(プロフ) - こちらでもコメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです(泣)まだ夏の話ですけど終わりまで見て下さい笑m(_ _)m (2021年4月10日 22時) (レス) id: 8296248943 (このIDを非表示/違反報告)
相馬(プロフ) - 更新されると、まだ終わらないっておっしゃってましたけど、あ…また日付が進んでいく…と思ってしんどくなります笑毎日更新されるのが楽しみです!! (2021年4月10日 20時) (レス) id: 7501b9a05e (このIDを非表示/違反報告)
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