8 ページ25
.
振り返るとそこには目に涙を溜めた彼女が居た。恐怖からかその声は震えていて、俺は考えるより先に彼女の両肩を掴んだ。
「大丈夫やったか!?何もされてへんか!?」
「う、うん……大丈夫…」
「っ…は〜……………良かった…」
息をついてその場にしゃがみこむ。何も考えず走ってきてしまい、後ろからやってくる足音にはっと顔を上げた。
「なぁ、おっさん。もうここのビーチの管理棟に連絡入れたからさっさと行けや」
「逃げようたって無駄やからな。証拠写真、俺ら全員で保存済みやから…分かったらさっさと自首せぇ」
ゾムとトントンが倒れた男を囲んで脅す。恐らくショッピくんが状況を伝えてくれたのだろう。
「せっ…生徒会長…!?」
「ああ、コネシマがいきなり走り出すから何事かと思えば…ウチの生徒やったんか」
「あ、今日のラーメン屋で注文取りに来た子やん」
「そうなのか?」
「そういやぁグルさん丁度居らへんかったから見てへんのか」
話を聞くに、どうやらAは例のラーメン屋で働いていたらしい。恐ろしい偶然だ。きっとゾムたちについて行ってたらそこでAと鉢合わせになっていただろうが、きっとその時点の俺では何も言えず無視していた自信がある。
こうした形だが彼女に声をかけられて安心した矢先、ゾムが俺を押しのけてAに詰め寄った。
「ちょお…!お前っ…!」
「なぁ、キミ何年生なん?」
「に、二年生です」
「じゃあ先輩やんな!俺ゾムっちゅうねん。今年入学した一年や。いやぁー、先輩可愛ええな!おっさんが声かけるのも何となく分かるわ」
ゾムの可愛い、という言葉にAが照れているのか反応に困っていた。見ていられず、俺も負けじとゾムを突き放す。
「だぁー!!ゾム!!Aにベタベタ触んなや!」
「えっ、シッマの彼女なん?」
「ち、ちゃうけど…」
「というかコネシマ、お前その人と喧嘩してたんじゃないのか?」
「っ…!な、んで、グルッペンが知っとんのや」
「おっと口が滑った」
わざとらしく口を抑えたグルッペンを睨んでいると、近くにいたゾムが実はと代わりに説明をした。
「大先生に今日海に行けって言われてん。シッマが喧嘩した相手が海にいるから、仲直り手伝ってやれって」
「珍しく大先生が突っ込んでくるから何かと思えば…まさか、な」
トントンが意味ありげに俺に目を配らせた。つまり、ここでAに会ったのは偶然ではなく、大先生に動かされていたということだ。
106人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なーや(プロフ) - こちらでもコメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです(泣)まだ夏の話ですけど終わりまで見て下さい笑m(_ _)m (2021年4月10日 22時) (レス) id: 8296248943 (このIDを非表示/違反報告)
相馬(プロフ) - 更新されると、まだ終わらないっておっしゃってましたけど、あ…また日付が進んでいく…と思ってしんどくなります笑毎日更新されるのが楽しみです!! (2021年4月10日 20時) (レス) id: 7501b9a05e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ