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やらかしたと一度黙った大先生は、それからそそくさと歩きさろうとする。
「…お邪魔しました〜」
その男の後ろ襟を引っ掴んで引き止めた。
「なんも言ってへんやんか大先生!一緒に教室行こうや」
「シッマ、目、目笑ってないから、怖いって」
表向きには笑顔を貼り付けながら、何邪魔してんのやという気持ちを込めてガンつけて睨んでやれば、彼はオドオドと大人しくなった。それから三人で教室に向かう途中、大先生に昼にジュース奢りな、と耳打ちすれば素直にハイと返事をする。
想定外の邪魔のせいでAに伝えそびれてしまった。俺は彼女の連絡先を知らない。大先生なら知ってるだろうが、彼伝いで彼女の連絡先を知るのは何だか癪な気がした。だが、クラスで堂々と頼めることでもない。こっそり彼女にだけ伝える為にはどうしたらいいか考えた末、思いついた作戦は昼休みに持ち越しとなった。
。。。
迎えた昼休み。
大先生とシャオロンを連れて購買へやって来た俺は、カツサンドと焼きそばパン、それとクッキーを買うことにした。何の気なしに買い終わらせようと思ったのだが、余計なことに気がつくのはいつもあの男だ。
「クッキーなんて珍しいなシッマ」
俺のジュースを買った大先生がそれを渡しながらクッキーを指さした。すかさずシャオロンまで突っ込んでくる。
「甘いもん嫌いじゃなかった?」
「俺が食うわけやないし」
「は?誰に買うたんそれ」
「あっ、ふーん…」
首を傾げるシャオロンの一方で、大先生は何かを察したように口角をあげた。果てしなくウザイ顔をしている。
それから教室に戻ってきた俺は一度自分の席に買ったものを置いて筆箱から油性ペンを取り出し、クッキーの袋にメッセージを書く。
いつもの席に着いた彼らから離れて、俺はAのもとへ向かった。
「A」
後ろから声をかけると、振り返った彼女は少し戸惑った様子でどうしたのか問いかけてくる。
「ん、これ」
「え、くれるの?」
「おん、やる」
「あ、りがとう…」
状況を把握しきれていない様子の彼女を置いて、俺はさっさと大先生やシャオロンの待つ席へ戻った。周囲の奴らがニヤニヤと揶揄するのも聞こえないフリをする。反応したら負けだ。
「ついに動いたな」
「嘘やろ…あのコネシマが恋愛を…?」
分かってましたと言わんばかりの大先生と、にわかには信じがたいと驚愕の表情のシャオロン。頼むから余計なことはしないでくれと願うばかりだった。
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なーや(プロフ) - こちらでもコメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです(泣)まだ夏の話ですけど終わりまで見て下さい笑m(_ _)m (2021年4月10日 22時) (レス) id: 8296248943 (このIDを非表示/違反報告)
相馬(プロフ) - 更新されると、まだ終わらないっておっしゃってましたけど、あ…また日付が進んでいく…と思ってしんどくなります笑毎日更新されるのが楽しみです!! (2021年4月10日 20時) (レス) id: 7501b9a05e (このIDを非表示/違反報告)
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