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「あっ」
「ん?あ、」
翌朝の下駄箱前。朝練を終えて校舎内に入ると、Aさんとたまたま鉢合わせになった。
「おはよう……シッマ…?」
「…おはよ、A」
「朝練?」
「そ、復帰して最初の朝練やった」
二人してぎこちなく慣れない呼び方で名前を呼ぶ。別に俺も彼女もコミュ障では無いから、ぎこちないといえど会話が途切れるわけでは無かった。
「そっか、お疲れ様。期間あくと調子出なかったりしない?」
「いや、そうでも。いつも通りやった」
「さすが、一年のエースって呼ばれてるだけあるね。部長とかやらないの?二年の夏には新部長決まるよね?」
「部長とか面倒やしやらへんよ」
「確かに運動部の部長とか何かと大変そうだよね」
特に彼女は気を使っているのか絶えず話してくれる。
俺はそんなAさん…Aの数歩後ろを歩いた。
「……で、あの、なんでさっきから二歩後ろ歩いてるの?」
それに気がついた彼女が不思議そうな顔をして足を止め、振り返る。ギクリと肩を震わせて、俺は彼女から視線を逸らしながら言った。
「…部活後やし、汗臭いかと思ってん」
まともに話せるようになったというのに、初手で汗臭いなんて印象を付けたくなかった。
けれど、そんな俺の気持ちはつゆ知らず、彼女は俺に向かって一歩半近づく。それから一歩後ずさる俺に、さらにもう一歩。
「うーん、そんなことないと思うけど。それより私、制汗剤の匂いの方が苦手なんだよね。特にスプレータイプのやつとかさ」
案外距離感の近いAに、俺はたどたどしく返す。
「…あの、A、サン」
「ん?………あっ、」
顔を上げた彼女はハッとした様子で目を開いた。それから錆び付いたブリキのように数歩後ろに下がる。
「ご、めん…近かったね」
心做しか顔が赤くなっているようだった。それに釣られて体温が上がるのを誤魔化すように、俺は昨日から思っていたことを伝えようと口を開く。
「…あのさ、A、今日の放課後…」
「シッマ〜おはよ…………あれ?」
不意に後ろからした声に話をさえぎられて振り返れば、そこには見なれた男が立っていた。
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なーや(プロフ) - こちらでもコメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです(泣)まだ夏の話ですけど終わりまで見て下さい笑m(_ _)m (2021年4月10日 22時) (レス) id: 8296248943 (このIDを非表示/違反報告)
相馬(プロフ) - 更新されると、まだ終わらないっておっしゃってましたけど、あ…また日付が進んでいく…と思ってしんどくなります笑毎日更新されるのが楽しみです!! (2021年4月10日 20時) (レス) id: 7501b9a05e (このIDを非表示/違反報告)
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