脚色 Ⅱ (ページ4)

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所変わって岩本達が居たホテルの一室には、現在部屋主である向井と、ベッドに眠る深澤のみが存在する
その他のメンバーは話し合いをすると言って部屋から出て行ってしまったのだ

kj「…、ふっかさん」

向井は、横たわる深澤の前髪に軽く触れ、掻き分けた
その表情は愛おしそうに彼を見るものであり、同時に何処か執着しているようにも見える

kj「ふっかさん、ふっかさん…、母さん、っ」

今まで見せていた楽し気な表情や相手を挑発するような表情とは一変し、深澤の愛称を呼び続けながら向井は涙を零す
その傍らでは、意味もなく砂時計が回転を繰り返していた

kj「…、一人ぼっちにはさせへんよ、絶対に…そんで、復讐したるからな、母さんを殺した奴を…、俺らをこの世界に閉じ込めた、■■を、絶対に見付けて、そんで…」

生気のない瞳で向井が呟き続けると、不意に深澤の瞼が震える
そして、ゆっくりと再び目を覚ました

fk「…、こぉ、じ？」
kj「…おはよう、ふっかさん」
fk「、なに…おまえ、ないてん、の？」
kj「泣いてへんよ、ふっかさんの気のせいやって」
fk「そぅ…？」

深澤は辺りを見回す
其処には岩本達の姿も、愛おしいラウールの姿もない
不安に彼は表情を曇らせていた

kj「ほかのみんなは、ふっかさんを起こさへんようにってホテル前にある公園で話し合いしとるよ」
fk「そっ、か」
kj「ただ…、」
fk「ただ？」
kj「…阿部ちゃんが、めめに攫われてしもうて」

その言葉を聞いて、深澤は目を見開く
すると、一瞬にして部屋全体の気温、気圧が下がって息苦しくなる
向井はそれを屁とも思わず、優しく深澤を抱き締めた

fk「っはぁ、はぁ、ッ…!!」
kj「ふっかさん、大丈夫やって…今度こそ、救うんやろ」
fk「で、もっ…、でもいつもッ、亮平がッ、康二、亮平が居なくなっちゃう…!!」
kj「大丈夫やって、ほら」

向井は優しい声色で子守唄を歌い始める
人魚姫が泡に消えゆく際に紡ぐような、美しい歌を…、
それを聞いた深澤はまた安らかに目を閉じた

kj「…ほんま、許せへんわ」

目を細め、心底憎たらしそうに窓に映る月を見て向井は呟く

kj「愛は平等やあらへんといかん、片方が重ければ、もう片方が耐えられずに壊れるから」

そんなことも知らない餓鬼が、俺達の、俺の大切な人を陥れようなんて身の程を知れ
砂時計の砂はどろりと液状化し、ドス黒い液体に変わる

向井はその光景を気にすることなく、いつものように戸惑いなく砂時計を回した
その口端からは…、