４０億の時の針

時・4 ページ6

ドキドキ…



ドキドキ…




「嘘… 嘘… こんな所にいるわけない… 」



「それも たった一人で… 」



太輔がいるなんて…



足はガクガク… 手はじわり汗…



心臓はバクバク…



「ほ、本物… ？」



キィ…



夢を見ているかと そっと扉を開け、ショールームにいる彼をジッと見つめた。



パンフレットを見ながら 嬉しそうにパンケーキを食べていた。




キィ… パタン。




「そうにしか見えない… 」


「何してんの、お前… 」



東さん！！



「さっさと接客しろって」


「わ、わかってるけど もう少し待って！！」



東さんは『 はぁ？ 』って顔。


扉の前で深呼吸。何度も何度もやったら 咳こんでしまった。



「何？知り合い？」


「いえ！滅相もございません！！」



知り合いだなんて！！



「何でもいいけど、あまり待たせると逃げるぞ、カモ」


「か！？カモだなんて 失礼な！」



彼は 王者の鷹よ！！


今は パンケーキで ふにゃんととろけてるけど！！



「だったら 早く行けって… １本売りつけて来い」



ドン！！



「ぉわっ！！」



「お待たせしました、この吉田がご説明させて頂きますので」



〜〜！！



な、名前 言った――――！！



「吉田さん よろしくお願いします」



おおおおおお！！名前 呼ばれた――――！！



もう… いつ死んでもいい…



太輔に名前を呼ばれた… 幸せ♡



「じゃあ、吉田、藤川様をよろしく、では、私は失礼致します」



へ… ？



「ふ、藤川… ？」



「あ、藤川 亮輔と申します」




藤川… ？




…



「違う… … ？」



「え？何か？」



藤ヶ谷 太輔じゃない… ？



でも、この顔…



声も…



「… しださん… 吉田さん」



はっ！！



「どうかされましたか？」


「い、いえ、なんでも… すみません、ぼ〜っとしてしまって」



太輔を好きすぎて そう見えているのかもしれない…



世の中には３人はそっくりさんがいるみたいだから…



ヤバいなぁ… 太輔枯渇症かも。



「実は、車種が気になってて、乗って決めたいなぁって」


「乗れるって聞いたので… あの、乗れますよね？」



いい声ね…



目を瞑れば まるで 太輔が喋ってるよう…



「あの、吉田さん 聞いてます？」



… へ？




！！？




「きゃ！！」


「吉田さん！？」



この人！！




やっぱり 藤川じゃない！！




本物の藤ヶ谷 太輔だ！！

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