４０億の時の針

時・28 ページ30

◆ 太輔・side ◆

最近、毎朝の散歩の時、Aと会う。


たった５分ほどだけど すごく楽しい。


俺を芸能人扱いしないで 普通に話してくれる。そこがいいところ。


話す声も穏やかで とても聞きやすい。好きな声の質。



「あ、そうだ… これ 横尾様に。遅くなりましたが プリンのレシピです」



オレンジの封筒…



そう言えば、前もオレンジの紙袋だったよな…



オレンジが好きなのかな？



何で 俺のカラーじゃないわけ？



「… わかった、渡しとく」


「よろしくお願いします」



嬉しそうにぺこりとお辞儀したA。



「じゃあ、私、行きます」


「うん、気を付けて」



元気よく緑の小道へと歩いて行くのをベルと共に見送り。


これが 毎日の日課になっていた。



「ワタ、これ Aから」


「ん？… あ！レシピ？さんきゅ」



封筒を渡すとすぐに開ける渉。



「… サッパリの正体は、豆乳だったのか、それは盲点」


「しかし、字まで めちゃくちゃ綺麗だな」



綺麗なんだ… ふ〜ん…


見せてくれないから わかんないつーの！！



「『 横尾様、頑張って！ 』って、いいね」


「ふふっ、本当に可愛いわ、あの子」



え… ？



「彼女の前に会ってたら ヤバかったかもな」


「ま、冗談だけど… ん？何？太輔、変な顔して」



ヤバかったって… 何？



好きになってたってこと？



「ワタのが浮気者じゃん、今の… 彼女に言ってやろ〜と」


「冗談って言っただろうが、冗談だよ、じょーだん」



その冗談、ムカつく…



「冗談でも、３２のオッサンには勿体ないわ」


「はぁ！？誰がオッサンだ！つか！お前も３１だろうが！！」



ふんだ！



「まったく… Aちゃんのこととなると 何でムキになるか わかってんのかよ… 」


「別にムキになってなんかいません〜だ！！」



事実を言ったまで！！


３２歳が２３歳と恋愛しようなんて 図々しいにもほどがある！！



「自覚なしかよ、ムカつく〜… 」


「何が？」



自覚？



「もういい、そのうち 気づくだろ」


「その時に自覚しろ！３１のオッサンを！ふんだ！！」



なっ！？



「オッサンは お前だ――！３２歳！！」



ぽん。




ん？何、肩の手…




「俺は、３３なんだが… なぁ、藤ヶ谷… 」




へ… ？




…




そ、その声は…




振り向くと めちゃくちゃ睨んでる 我がリーダー…




３３歳、最年長…




こ、怖い…

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