４０億の時の針

時・27 ページ29

持ってない人なんか この東京にはいないと思う…



誰もが片手に持ち 歩いてる。



私くらいだよね…



「そっかぁ… じゃあ、東さんに橋渡ししてもらおうかな」


「すみません… 」



あ〜… かっこ悪いなぁ…


恥ずかしすぎるよ〜… とほほ。



「ねぇ、不便じゃないの？」


「便利さが わからないので… 」



太輔が不思議そう。



「ふ〜ん、そんなもんかな？」


「あると便利なのに」



確かに便利だとは思う。



「最近 なんでもこれだもんな」


「俺らのチケットだって デジチケだしさ」



デジチケ… ？


紙じゃないってことかな… ？



「さて、そろそろおひらきにするか、俺、明日も早いし」


「ワタ、ご馳走様〜♪♪」



え？



「ん、ついでにトイレ行ってくる」


「ほ〜い」



まさか…



「ラッキー、おごってくれるらしい〜♪♪」


「いやいや、それは ダメでしょう！」



こんなに たくさん食べたのに！！



「横尾様！！」


「あ、A」



急いで 渉の後を追った。



店員さんといる渉を発見！



「カードで」


「かしこまりました」



やっぱり 払ってる！！



「横尾様！」


「ん？あれ？Aちゃん どうしたの？」



どうしたって…



「いえ、あの… お、お金… 」


「ん？あ、いいよ、俺が誘ったんだし」



誘ったからって…



「それよりさ、太輔から 担降りし… 」



え…



「おーい、ワタ、A〜」


「よこーさん、ごちっす！！」



担、降り… ？



今、担降りって言わなかった？



「今度は 太輔が払えよ」


「ほーい！」



担降りとは、推しのメンバーから降りること。


バクバクと心臓が跳ねる。


もしかして… … いや、ないない、だって 私、いちファンだよ？


ファンの子 全員 覚えてるわけないじゃん、だって 何万人だよ？


でも、渉って千里眼ぽいところがあるから… (あくまでイメージ)


う〜ん、なんだろ？なんの言葉、聞き違えしたのかな？？


たん… タン？


タン、おーり？？なんか違うなぁ？う〜〜？？



「A、お腹いっぱいになった？」


「え、あ、はい！いっぱいになりました！すごく美味しかったです！」



気づけば 太輔が私の横にいた。



やっぱり、カッコイイなぁ…



「じゃあ、帰ろっか」




夢にまで見た太輔の横にいるんだよ…




聞き間違いじゃなくても、担降りなんかするわけない。




私は、いつでも太輔が一番なんだから。

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