４０億の時の針

時・12 ページ14

最近、夏ツアーのDVDが発売の為、どの雑誌も彼らが載っていた。


その小さな記事も見逃したくない私は 片っ端から読み漁り。


これが 仕事から帰ってきた時のささやかな楽しみ。


買うことはできないけど 隅から隅まで彼らのことを知りたかった。



「今回の太輔もかっこいいではないか〜♪」



全員かっこいいけど ダントツ１位は やっぱり 太輔。



「目に焼き付けろ〜〜」



何冊もの小さな記事を見つけては脳に焼き付けるように見ていた。



… パタン。



「よし！読んだ！満足！さて、帰ろっと！！」



忘れないうちに帰る！！



急げ…



え！！？



ドン！！



「ぅわ… ！！」


「ぁ！！」



やだ！ぶつかっちゃった！！



怒られるかも！！謝らなくちゃ！！



「ご、ごめんなさい！」


「あ、いえ… 」



あれ？怒ってない…



よかった〜… でも、気まずいからさっさと行こっと。



ペコリとその人にお辞儀するとドアに手をかけた。



キィ…




ガシッ。




「… へ？」




何…



この手…



自動扉じゃない、このコンビニの扉…



開けようとしてるのに… 押さえられてて開けられないんだけど…



はっ！！



もしかして 怒ってる！？



も〜！東京人って すぐ怒るんだから〜〜！！



怖いのでその人を見ることはできない、でも、男の人だということは何となくの雰囲気でわかった。



「す、すみません！本当に ごめんなさい！」



慌てて謝るけど 全然離してくれない手。



う〜、どうしよう〜〜〜〜！！



…



「冷た、ラテあげたのになぁ〜」



…



「… え？」




ら、ラテ… ？




「じゃあ、今日は コレ」



う…




嘘っ…




ガサガサッ…




「はい、お肌にいい、ミネラルウォーター。あげるね」



ポンと渡されたペットボトル…



扉が急に軽くなり、横を通っていく…



…



まさか… 本当に？




「た… 」


「ん？」



呼んじゃダメ…




…




その名じゃない…




「ふ… 藤… 川様？」




私にくれた物と同じものを飲みながら にっこり。




これは どういうこと… ？




今度こそ 私は夢を見てるのかしら… ？




「うん、こんばんは、吉田さん」




私の名前… 呼んだ…




なんて リアルな夢…




目深にかぶったキャップとマスクの間から 見える笑った瞳。




さっきまで見ていた雑誌の人がいる…




神様…




今度は なんのご褒美ですか？

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