４０億の時の針

時・10 ページ12

あの 夢のような時間…



いまだに どうやって帰ってきたのか わからない。



気が付いた時には、藤川様はいなかった。



「あれは本当は夢だったのかな？」



でも、夢じゃなかった…



帰った後は、すぐに杉野さんとバトンタッチ。



杉野さんが藤川様のご希望にあった車種の見積書を出した。



藤川様は上機嫌で帰ったという。



その後、私はというと…



「タピオカ、ほうじ茶、ラテ〜♡ ふふふっ〜♪」



ラテをニヤニヤ見ては 幸せを確認する毎日。



「勿体なくて 飲めないよ〜♡ 」



そう、勿体なくて 勿体なくて、あれから1週間も経とうとしてるのに飲んではいなかった。


太輔がくれたというだけで 嬉しくて嬉しくて…



「宝物だぁ〜♡」


「お、これ 俺 好きなんだ、いただき！！」



！！？



キャ―――！！！



「ダメ――――――――――！！」



ドスッ！！



「ぐえっ！！」


「返して！！」



思いっきり体当たり、よろけたところを奪い返した。



「お前！先輩むかって なんてことすんだよ！！」


「これは 絶対にダメ！！」



死んでも 死守！！



ガルルルルッ… と 牙を剥くように威嚇した。



「… はいはい、ごめん、ごめん」


「まったく、いつになったら お前は 俺におごってくれるのかな〜？」



あ…




…



「ご… ごめんなさい… 」




私…




…




ぱこっ。




「いたっ… 」


「嘘だよ、後輩におごってもらうほど 落ちぶれてねぇよ」



東さん…



すみません…



優しく叩かれたところが痛くはないけど 痛かった…



迷惑ばかりかけてる… この４年間。



入社当初から 東さんをはじめ、このディラーの皆さんには お世話になりっぱなし。



わかってはいるけど、私には 使命があるの。



それを果たすまでは、何が何でも 頑張らなきゃいけない。



「でも、それ 賞味期限早いから 早く飲めよ」



賞味期限…



やっぱり あるよね… でも、私は…



「しかし、今月はダメだな」


「あ〜、今回の金子様のダチ、不発だった〜… 」



そう、金子様は今回は紹介役、成約には至らなかった。



「お前もダメだったな、あの藤川様」



太輔…



「ううん、いいの」



もう いいの。




これをもらっただけで もう十分。




きっと このラテは、４年間 頑張ったご褒美…




だから…




これで 私は また 頑張れる。

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