快晴を翔ける (ページ4)

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時化空ページ4

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「また学年7位なんか取って…お兄ちゃんはいつも1位を取ってたのに」

ダイニングテーブルに置かれたテストの答案用紙と総合点の書かれた紙を何の感情もなく見下ろす。母は眉間に皺を寄せ憤慨し、父は諦めたように席を立った。

トリイくんと不思議な出会い、などと勝手に称したあの日から数週後、定期テストが行われ今日その答案が全て返された。自分としては上々の出来。中学の頃からすれば考えられないような水準。
しかし1番でなければ許されない。
兄が通った道の上を私にも歩かせようとする両親はまるでそれが普通であるように私をそこに立たせるのだ。

兄が嫌いなわけではない。むしろ兄はこんな家の様子に私を心配してくれている側だ。忙しい仕事の合間に心配の連絡をくれるし、私宛にケーキやお菓子を買ってきてくれたりする。

私が我慢すればいい話だ。数字で測られるのも今年で終わる。隆起する呼吸を一定に均して、次は頑張るからなんてもう溢れている我慢のコップの縁を高く継ぎ足して、母との会話を終わらせた。

「A、お兄ちゃんをもっと見習いなさい」
「……うん」

すれ違う瞬間に囁かれたその言葉が、ずぶりと胸に刺さって沈んでいく。もう穴だらけの心を更に壊すように、ヒビを大きくしていく。

泣くことも無くなった。
苦しくないし、辛くもない。
ただただ、虚しさに沈む。

【時化空(しけぞら)】
荒れ模様の空。