70 (あたししかいない) ページ20
｢こちらです！｣
｢はあ…っはあ…！｣
あたしの少し先をこんのすけさんが懸命に駆け、あたしのすぐ後ろに三日月様がいた。共に荒廃した屋敷の廊下を、ボロボロになった五虎退さんと、小さな白虎達、刀の状態の一期一振さんみんなを担架に乗せて、必死に引きながら。
＿＿＿＿ほ、本気ですか…！
あの後、政府の音声を完全無視して、押入れから組み立て式の簡易担架を、こんのすけさんと三日月様に指示を仰ぎながら黙々と用意し出したあたしへ、電話向こうの喧騒をようやく制した人物…あの、最初の役人さんが切羽詰まった様子で声を上げてきた。その役人さんは、｢っ初めに話した者です！松田といいます…！｣とあたしに名乗った。
｢殺されるかもしれません…！｣
松田さんを筆頭に、やっぱり政府はこんなふうになっちゃった本丸の刀剣男士達に対する警戒が第一にきてるっぽかった。でもあたしさっきからずっと考えて、ほんと同じ結論に至るけど、この神様たち、何も悪くないよね？
何であたしがやらなきゃなのかって言われてもそんなの、この世界に来ちゃった時点でわかんないわ。理由もクソも無く、ただ、出来る限りのことは、してあげなきゃって、それだけをここにいればいる程思うだけだ。
そしてその出来る限りのことをしてあげられるのは、今ここに、あたししかいない。
「…っ、お”え…ッ」
五虎退さんを間近で見たあたしは、1回トイレに駆け込んで吐いた。なにあれ、何したのほんと。目をぎゅっと瞑ったその瞼の裏にも焼き付いた凄惨な姿に、嗚咽しながら、何度も何度も言い聞かせた。あたししかいない。何にも知らない何にも分からないあたししか。
自分の元いたところ、元の生活。彼らの過去も自分の身の危険も、そんなの、あんな風になっちゃってるちっちゃい子供見てからじゃ、ぜんぶ後。治してから考えろ。
｢お話は、みんな聞くつもりです。仰っていることが最もだということも、理解しています。でも、どうかこの二振りを治した、その後でお願いします｣
威勢よく松田さんにそう言ったはいいものの、直視することすら苦痛な五虎退さんのからだを、三日月様に手伝ってもらいながら、担架に乗せる時のあたしの手はぶるぶる震えてて。
担架の3分の1程しか埋めない五虎退さんは、生きてるなんて到底思えなかったし、｢通信は念の為繋げ続けます｣と言った松田さんの声を背中に聞きながら冷や汗が止まらなかった。
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鳥(プロフ) - 読者様 一つ一つにお返し出来ずすみません！コメントありがとうございます！(三)についてですが、推敲が終わったところから随時公開しております！またお時間空いたり思い出して頂けた時に読んでもらえたら嬉しいです。遅筆ですが楽しんで書いております (7月7日 10時) (
レス) id: 4bf57b87a0 (このIDを非表示/違反報告)
yura(プロフ) - 初めまして！一気に見させていただきました。とても面白いです！そして続きが気になります。パスワードおしえていただけないでしょうか？ (6月18日 13時) (レス) @page50 id: 673a00a1b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ＠前垢消えた(プロフ) - 続き楽しみにしてます！！！！！ (2023年4月28日 13時) (レス) @page50 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
テオ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。ここまで読ませていただき本当に面白いと感じました。表現の仕方がとても好きでストーリーも最高です。推敲が終わるのをとても楽しみにしています。無理のない程度で頑張ってください💪 (2023年4月27日 14時) (レス) id: 85b09c3093 (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 始めまして！クロです凄く面白くて続きが気になるのでパスワード教えてくださいm(._.)m (2023年3月30日 1時) (レス) @page50 id: 16daf975b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鳥 | 作成日時：2020年2月24日 20時
