最後の雨

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家に帰って気持ちが晴れないまま編集を始めたけど
捗るわけもなく、
大体の人は出勤する時間になってしまった。


一息つこうとイヤホンを外したとき、
ちょうどAからメッセージが届いた。



Aおはよう!
今日仕事終わったら会いたいんだけど忙しいかな?


ゆた「もしもし？

　 おはよう、A。」



気付いたら電話をかけていた。

2コール終わる前
遠くに聞こえる彼女の声を確かに感じてスマホを握り締める。



「びっくりした〜笑
　編集してた？」



驚きながらも嬉しそうな声を聞いて
愛しさが溢れる。



ゆた「うん。

　 …最近どう？困ったこととかない？」



ひゅうがから聞いたけど、と話を切り出さなかったのは
俺の狡さだと思う。

言ってくれるか、黙っているか、
彼女を試すようなことをしてしまったと自分に嫌気がさす。



「どしたの急に。笑

　…大丈夫だよ、至って普通。」



俺に嫌がらせのことを話さないのは
心配させたくないからじゃなくて

俺が頼りないからなんじゃないか。

そんな思いがぐるぐると頭を巡る。



ゆた「…そっか。ならよかった。」



問い詰めないのは俺の弱さ。


明日は撮影が夜までかかる予定だった。

もう何日も会っていないから
会いたくて会いたくて仕方がないけれど
こればっかりはどうしようもできない。



ゆた「ごめんな、最近時間作れなくて。」


「全然大丈夫だよ、
　100万人までもう少しだもんね。」



YouTuberって仕事を理解するのは難しいはずなのに
Aはいつも協力的だ。

そんな彼女に俺は何も返せていない。

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