最後の雨

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「なんだかなあ。」



きっともう美味しくないであろうケーキを見て呟く。

彼のことだ、ぎりぎりまで寝ていて
慌てて家を出たから忘れてしまったのだろう。


悪気がないことは分かっている。
分かっているから責め立てようとも思わない。


一人で食べれる量でもないし
食べる気にもなれなくて



「ごめんね、」



そのままゴミ箱に放り込んだ。


最近の彼はよく忘れる。

さっき捨ててしまったそれも、
小さな口約束も。

それだけ動画のことで頭がいっぱいで
小さなことに気付けないくらい疲れているのだろう。


就職して働いていたときより楽しそうだから
あえて細かいことは言わないで心に秘めておくようにしている。




恥ずかしがり屋で私に対する思いをなかなか言葉にできないゆうたくんは、
いつも行動で表そうとする。

だけど少し要領がよくない彼は、思うようにいかないことも多い。

編集を早く終わらせて会う時間を作ろうとしたけど
途中で寝落ちしてしまったとか。


その度に酷く悲しそうな顔をして謝ってくれる彼。

私だってゆうたくんのことが好きだ。
好きな人が悲しそうな顔をしてるところはできるだけ見たくない。

だから謝られる度



「そんなことしなくてもいいよ、
　余裕あるときに会ってくれればそれでいい。」



と笑顔を作る。


これからもっともっと大きく、有名になっていくだろう
ゆうたくんの、みんなのことを
私が邪魔するわけにはいかない。

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