最後の雨

１３ ページ13

.

目を覚ますとAはもう隣にはいなくて
焦って周りを見渡すと時計の針は11時を指すところだった。

仕事行ったのか。


ぬくもりはなくても匂いはベッドに残っていて
思わずAの枕に顔を埋める。

好きな人の匂いって滅茶苦茶落ち着く。


もっとゆっくりしていたいけど集合時間もあるから何とか起き上がると
テーブルの上には小さな紙きれ。


ゆうたくん50万人おめでとう!!
冷蔵庫にご飯あるから温めて食べてね。
あと、もしよかったらケーキみんなで食べて!!
仕事行ってきます、今日もお互い頑張ろう!


丁寧な字と、似てるような似てないような俺の似顔絵。

写真を撮って、冷蔵庫を覗きに行くと

いつもより手の込んだご飯と
小さいけれど綺麗にデコレーションされたケーキ。


Aがお祝いしてくれようとしていたんだと気付いたと同時に
着信の意味も理解した。



動画撮影中で出れなかった電話。
気付いたのが遅い時間で寝ているだろうと折り返しもしなかった。



昨日、どんな気持ちでキッチンに立ったんだろう。
どんな気持ちで俺に電話をかけてきたんだろう。
どんな気持ちで独りで眠りについたんだろう。



彼女の気持ちを考えたら申し訳なかった。

せっかく作ってくれたからとご飯を少しだけ口にして慌てて家を出た。
Aに後で謝ろう。


ケーキは冷蔵庫に入れたまま。

１４→←１２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す