課長がお呼びです。 (ページ20)

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「なあ、なんで突っ立ってんの？
それ何？」

大事に抱えてるチョコの袋を指差された。

「こっ、これは。
いつもお世話になってるので、
課長に」

好きです、なんて、
とても言えない。

ましてや、
憧れてる本人を、
誘惑なんて出来るはずない。

「バレンタインの？」

なんでか、錦戸課長が立ち上がって。

私の目の前まで歩いて来た。

じっと見下ろされて、
視線がグサグサ痛い。

「はい」

そっと差し出すつもりが、
錦戸課長の胸に、ぐいぐい押し付ける感じになってて。

「もらうわ。
これって本命？
それとも世話なってるから言うてたように、
義理？」

そんな事、聞かれると思ってなかった。

カードには何も書けなかった。

「ほ、本命です」

声も足も震えてきそうなのを、
ぐぐっと押さえた。

いつもいつもいつも。

男の人に騙されてきた。

二股に、
遊び。

私はいつも一番になれない。

だけど。

今度だけはなりたいの。

どうして、こんなに冷たくされて、
なんなら、バカにされてるのに、

錦戸課長が好きなんだろう。

自分でもよく分からない。

断られるに決まってる。

錦戸課長は、真面目で、
仕事一筋で。

女嫌いだって。

みんな、噂してるから。

「ええで。
付き合おか」