課長がお呼びです。

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「ねえA、
あの堅物の錦戸課長が落ちるか、
試してみない？
もうすぐバレンタインじゃん。
本命チョコですって、
渡してみるの」

莉菜がとんでもないこと言い出すから。


焦って、湯呑み、落っことしちゃった。


だけど。


「いいね。
やってみる？」


無理して答えた。


「どんな顔するか楽しみ」


ちゃんと大学時代からの彼氏もいる莉菜にとっては、ゲームなんだろうけど。


私は・・・



密かに憧れてる錦戸課長と、

口を聞くのさえ緊張するのに。



「ちゃんと、本命って分かるような、
高いのにしなきゃ。
それか手作り？
今夜、空いてます、みたいなこと言って。
その場でキスでもしちゃう？」


莉菜って、時々、怖い時がある。


だけど、他に親しくしてくれる人いないし。


一人になりたくない。


子供みたいかな・・・


「真面目そうだもんね。
入社以来１０年間、浮いた噂がないんでしょ。
女の人といると緊張するんですとか、
いつも言ってるけど。
誘惑してやったら、どんな顔するかな。
案外乗ってくるかも？」


自分の本音とは裏腹なこんなセリフ。




だけど・・・


錦戸課長、私のこと、覚えててくれてるのかな。


それさえ、不安なくせに。

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