交錯する線【Kento】

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中島健人side



え……なんで？



俺が見たのはコーヒーショップで楽しそうに話す菊池と中村サンの姿だった。





その現場を見たのは偶然だった。

ちょうどマネージャーの運転する車が赤信号で止まり、後ろに乗っていた俺が何気なく窓の外のコーヒーショップに目をやると、馴染みのメンバーがいるのが目に入ってきたのだ。



「え、あれ菊池じゃね？」

そう言うと

「あぁ今日は空き時間があるから出かけるって言ってましたね」

とマネージャーが答えた。


「そっか」ともう一度視線を戻すと、なにやら楽しげに話している相手の顔がチラリと見えた。



え？あれって中村サン……？



「ちょっと車止めて！」



マネージャーはどうしたんですかと驚いている。


「あれ見て、菊池と一緒にいるの中村サンじゃない？！」

「ん、中村さんとは？…あぁオーダースーツの担当の方ですね。」


マネージャーが運転席からコーヒーショップを確認する。



「何で菊池といるんだよ」

呟くように言うと


「菊池さんもスーツ頼むからじゃないですか？」

「でも何で外で会うんだよ、店で会えばよくない？
俺も行ってくる」


「ちょ、中島さん何言ってるんですか！
中島さんまで行ったらバレる可能性も出てきますからだめですって。
それにもう現場行かないと。
菊池さんには注意しときますから。」



2人は顔を寄せ合って和やかにに話している。




「車、出しますよ」





俺の誘いは断ったのに。




彼女のあの感じだと菊池を外に誘うなどあり得ないだろうから、どうせ菊池が上手いこと言って誘い出したんだろうが、そもそも何誘ってんだよ。



モヤモヤを吐き出せないまま俺は目をつぶり、車のシートに深く座り直した。

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