それはまるで魔法のように【７】 (ページ5)

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＊股割り＊ページ5

伊藤 side

練習前のアップが終わって、さあ、これから基礎練。って時に珍しく…いや、初めてAが俺のところにテテテテッと近寄ってきた。何だ、何だ？と思っていたら、突拍子もなく、未成年選手を１日貸してください！と訳のわからないことを言いはじめる。

89「え？何？どうしたのさ」

『私、１年間１軍で柔軟指導させてもらってわかったことがあります』

89「は、はあ」

『ここにいるうちに股割りをして柔らかくしよう。と』

成人した子の股割りはやった事が無いので、未成年選手限定で股割りしたいんですけど…と提案してくる。うん、それは俺の一任で任せられないから、荒木監督に聞いてみな？と言うと、わかりました！と荒木監督のところに行くA。

今シーズン、１軍を経験した選手からは、Aの柔軟指導は鬼だと聞くけど、ちゃんと結果が出ていて、みんな随分と身体が柔らかくなっていてビックリした。成果はあるのはわかる。ただ、股割りは…。

『伊藤コーチ！監督からオッケー出ました！』

89「マジかよ」

『未成年選手は…瑛斗くん、竜、幸太郎ちゃん、侑平の４人ですね』

股割りすると今日１日は使い物にならないので、練習お休みさせてあげてください！とサラッと怖いことを言って、早速近くにいた清宮を呼び出すA

『幸太郎ちゃん、どのくらい柔らかくなった？』

21「…ごめんなさい、全然です」

『ちょっと見たいからさ、立ったまま地面に手をついて、そこから足を左右に開脚してみ？』

21「え？えっと、こうですか？」

そうそう、このまま肘を地面に肘をついて前を向いてみ？と言って３０秒後。清宮の腰に思いっきり負荷をかけると、バキィッ！とあり得ない音がした。

89「いってー…」

21「コーチ！痛いのは俺ですよ！いってーー！！」

『はい、股割り完了。幸太郎ちゃんは今日１日かけて開いた足を元に戻してね』

21「あの人！あの人、鬼ですよ！」

俺、Aが柔軟指導者でいる時の選手じゃなくて良かった。と心底思っていると、今度はあっちから、バキィッ！って音がして、難波の悲鳴が聞こえる。

55「他の人にもやってくださいよ！」

『私、股割りできるの未成年者だけやもん』

次はブルペンやなー。と言ってブルペンに消えると、悲鳴が２つ。まあ、身体が柔らかくなるなら、コーチとしては何にも言えないからな。

89「少年たちよ、頑張りたまえ」

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