終わらない夏ー完結ー (ページ7)

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07 名前ページ7

『いいの？私も貰っちゃって』

大人二人分ぐらいのベンチで、俺と女の子とばあちゃんの順で横並びで座り、ばあちゃんが女の子の分までアイスを買ってあげた。
棒付きのバニラアイス。俺と同じものを彼女は無表情のまま一口食べた。

『美味しい…』

『そりゃ良かった。溶けないうちに早くお食べ』

先程の無表情とは違い、目をキラキラと輝かせて、彼女は食べるスピードを上げた。

『お前、アイスとかあんま食べへんの？』

まるで彼女の反応はアイスを食べた事がない様に見えた。
すると彼女の食べる手が止まった。

『…あんまりワガママ言えないから』

俺の質問に彼女は急に眉を下げて悲しい表情に変わった。
小さいながらでも、この質問は聞いちゃまずかったんだと悟った。

『そういえば、どこから来たんや？ここら辺に引っ越して来たんか？』

彼女の気に障った事を察して、すぐ様ばあちゃんが違う質問をし出した。

『ううん。こっちにお婆ちゃん家があるから遊びに来たの』

『そうかい。お前さん名前は？』

ばあちゃんの質問に、俺より先にアイスを食べ切った彼女は、残った棒をベンチ横のゴミ箱に捨ててから口を開いた。

『…A。AA』

彼女の名は大人になっても忘れる事はなかった。