終わらない夏ー完結ー (ページ26)

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26 あの約束をもう一度ページ26

「ちっ、行こうぜ」

ヒカルさんを見た途端、男達は分が悪そうな顔でその場からそそくさと去って行った。

「…あの、ヒカルさんですよね？」

「あー…、マジ悪い。色々と…」

抱き締められた腕を解いてもらって、改めて正面からヒカルさんの顔を見上げると、こめかみからは汗が流れ落ちてて、息も少し上がっていた。

「急いで新幹線乗ろうと思って走ってたら駅構内で携帯落として壊れるし、実家に着いたらAは先に一人で行ったって言われるし、見つけたと思ったらナンパされとるし…」

「…な、なんか、ごめんなさい」

そんな裏話があったとは知らず、勝手に行動してしまって申し訳なくなった。

「謝らんでええって。そもそも俺が遅くなったのが悪いんやし」

ヒカルさんは暑いと言って手で顔周りをパタパタと扇ぐが、確かに真夏の夜はまだ気温も低くなく、この時期に合わない薄手の上着は暑いだけでしかない。

「あの、何か冷たい飲み物買ってきますね！」

「いや、ええから！それにもう…」

ー…パァン！

ヒカルさんの声に被せて、空に大きな花火が咲いて散った。
それが何個も立て続けに打ち上げられ、きっと時間的にも最後なのかなって思った。

「ヒカルさん…ヒカルさんって…」

あの時の男の子ですか？
そう聞くつもりだったのに、ヒカルさんの方を向くと手をそっと握られた。
驚いて握られた手からヒカルさんに視線を向けると、ヒカルさんは何個も打ち上がる花火をじっと見つめていた。

「…A、また来年も花火観に来よう」

「…っ！」

その台詞は小さい頃、この場所で、あの子と約束した言葉。

ああ、やっぱりヒカルさんは…、、

「…"圭太くん"…っ、約束ですよ！」

私は大粒の涙を流しながら、目の前の圭太くんとあの時と同じ約束を交わすと、圭太くんはふわりと笑って横にいる私を強く抱き締めてくれた。