終わらない夏ー完結ー (ページ2)

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02 忘れられない人ページ2

あれから数十年という月日が流れ、彼とは一度も会うこともなく今に至るわけで…

「…ぃ…おい、A！」

「！？、は、はい！」

自分が呼ばれた事に気付きハッと我に返った。
慌てて後ろを振り返ると、山田先輩が私を心配そうに見下ろしていた。

「大丈夫か？パソコンの画面をぼーっと見てたけど」

「…すみません。ちょっと考え事してました」

はははと笑って誤魔化すと、山田先輩はそれ以上問い詰めては来なかった。
山田先輩は私が入社した時から何かと気にかけてくれている大事な先輩。
部署は違うけれど、仕事の事で話すことが多々ある。

「あのさ、今日良かったら飯とかどう？」

「あー…、今日予定があって…」

「そっか、じゃあまた暇が合えば行こうぜ」

「はい。すみません…」

そう返事すると、山田先輩はまたなと言って私の頭を優しくポンポンと撫でてから自分の部署へと戻っていった。

「えー、行けばよかったのにー。勿体ない」

そう口を挟んできたのは、向かいのデスクに座る同期の結衣。

「だって、今日は先約があって…」

「いや、私だったら先約よりも優先するね！あんな営業トップクラスで成績優秀、おまけに容姿端麗で社内一のモテ男。しかも、Aとだけ良くご飯行くじゃんあの人ー。絶対気があるよー！」

「いやいや、考えすぎだって」

歳も少し離れてるし、きっと妹みたいな感覚なんだと思う。
じゃなきゃ、あんな良い人が平凡な私を相手にする筈もない。

「てか、山田先輩あんなにアピってるのに、他に好きな人でもいるの？」

「いやー…、好きな人というか…」

ふと頭を過ぎったのは、あの男の子の姿。
ただ、好きというよりも、忘れられない人に近いのかもしれないけど…、

「今は特定の相手とか別にいいかなーって感じかな…」

「そんなのんびりしてると婚期逃すぞー」

「…それは気をつけます」

その助言に関しては素直に受け止めたのだった。