第六章〜風間邸〜 ページ18
雪「はぁ、はぁ」
あれから、霧島家を出た百合達は風間邸に向かっていた。雪が息切れをしているのは移動手段が徒歩であるからだ。さらに、霧島家から風間家への道はかなり遠いため、時間をかけて移動するしかない。
百合「かなり、歩いたな」
火龍「さ、さすがに遠いな」
あの、火龍でさえ少し疲れている。
百合「どうする?一休みでもするか?」
百合はさっきから疲れ切っている部下の様子を見て、気を使った。
だが
火龍「俺はまだ大丈夫だ」
百合「そうか。余り無理はするなよ?」
火龍「あぁ。わかってるさ」
雪「わ、わたしも!大丈夫です!」
と、雪は答える。
百合「しかし…」
火龍「お前は大丈夫じゃねぇだろ」
そう言って火龍が雪に近づいてその側で腰を下ろした。
火龍「ほら、乗れよ」
雪「え?でも…」
火龍「いいから!」
雪「重いと思うよ?」
火龍「そんなの乗ってみねえとわかんねぇだろ?」
雪「わ、分かった」
恥ずかしそうに雪は火龍の背に乗った。
雪「お、重いでしょ?」
火龍「ううん。全っ、全軽い!」
和かに、火龍は言った。
その光景を真顔で見ていた百合はこう言った。
百合「お前達!俺がいることを忘れてはいまいか?」
火龍「ゆ、百合…」
雪「百合様!?」
百合「もしや、その反応は本当に気づかなかったか!?」
火龍「あ、いや。それはその」
百合「なんていうか」
百合「俺は空気か?空気なのかーー!?」
百合の叫び声が森の中に響いた。
火龍「百合、本当にごめんって!」
雪「本当にごめんなさい。百合様!」
百合「知らん」
この会話は何度目だろうか?先ほどからこの二人は必死百合に謝り続けているのだが一向に許してくれない。
先ほどとは百合が空気にされてしまった事だ。
百合「わぁー!もー! 」
突然、百合は大声を上げて走り出した。
火龍「百合!?」
雪「百合様!?」
二人も慌てて百合の後を追った。
百合「ぜぇ、ぜぇ」
あの後、自分でもどこに向かっているかはわからないまま百合は全速力で走り続けた。
百合「ぜぇ、ぜぇ。はぁ〜、疲れた」
やっと息切れがなくなった百合は、前を見た。
百合「ん?ここは?」
前を見てみるとそこは見覚えのある場所だった。そう、百合が全力疾走で走ってきた場所は風間邸前だったのだ。
雪「百合様ーー!」
火龍「やっと追いついた」
後からやってきた二人も無事に合流した。
百合「遅いぞ!お前たち!」
【次回二人の女】
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作者名:如月輝夜 | 作成日時:2016年9月16日 21時