検索窓
今日:5 hit、昨日:13 hit、合計:77,078 hit

**** ページ24

変若水を使う価値って何?

そんなもの、
命あるもの全てに価値があるよ。


生きたいと思うのなら、
自分が果たしたい事があるのなら…。

生きて欲しいと思う人なら、
これから先に有るものを見つけて欲しいと思える人なら…。




A「私の判断で、
使ってもいいって事だよね?平助君…」




いくら待っても、
斎藤さんは変若水を使う気がない。

それなら。




A「ごめんなさい。
私の勝手な判断になります…。
どうか、許してください」

斎藤「A…?」




握っていた大通連をその場に置き、
斎藤さんの目に前に出した変若水を手に取った。

小瓶の小さな二を取り捨て、
一気に口に含む。




風間「何をする気だ」




ちー君に小さく笑みを作ってから振り返り、
斎藤さんの顔を両手で包んで上げさせる。

小さく開いた口に、
自分の口を押し当てて流し込んだ。




斎藤「う…っ、ぐは…っ」

風間「そこまでして、生きながらえさせたいのか」

A「私が、生きて欲しいって思うから…。
もう嫌なの!
私の目の前から、大切な人がいなくなるのは…」

風間「そやつを鬼にしてどうする。
お前が面倒を見るのか?」

A「そうだね…。
それなら、私が立派な鬼にしてみせる」




立派な鬼か。

私自身が立派でもないのに、
何を言っているんだろう。


視界の端に映る斎藤さんの傷は、
みるみる塞がって無くなっていく。

すると、赤黒い染みが付いた浅葱色の羽織が私を覆った。

強く、でも優しく私を抱き寄せながら、
斎藤さんは刀を構えている。




風間「フン。興が削がれた。
そこの番犬、もう一度Aを預けてやる。
守り切ってみせろ」

斎藤「言われずとも、必ず守る」




ちー君は、ほんの少しだけ口角を上げて、
風のように去って行った。

何故かこの時ばかりは、
大砲の音も銃声も聞こえなかった。




A「すみません…。私、勝手に…」

斎藤「……あんたが変若水を作った時、
絶対に使わせまいと勝手に心に決めていたのだが…。
まさか、それに助けられる日が来るとはな。
すまない…、辛い思いをさせた」

A「私、斎藤さんの意思も聞かずに…っ、
私の我儘で…。
生きていて欲しかったから!
斎藤さんが、いなくなるなんて…、考えられなくて…っ」




鼻に充満する血と、斎藤さんの匂い。

まるで泣きじゃくる子供をあやすような優しい抱擁に、
こんな状況なのに安心したのか、
涙は堰を切って流れ出た。

94:時代のうねり→←93:三人目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
66人がお気に入り
設定タグ:薄桜鬼 ,
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

斎藤ようこちゃん(プロフ) - 斎藤さんと恋仲になって欲しいです。 (2020年5月24日 22時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まほろ | 作成日時:2019年9月19日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。