35話 ページ37
「ねぇねぇ夏油くん、
私と体術勝負するかい？」
根性だとか意味のわからないセリフで、
無理やり呪力を使って笑う彼女。
呪霊が体の中にいたんだから、
僅かな霊障はあるだろうし、
延々続く痛みが
彼女に傷を残してないとは思えないし、
根性なんかで、
失った呪力を使っておいて、
まともな身体状況じゃないことは
考えたらすぐに分かる。
「私が体術も行けることを忘れたの？」
「ふふん、私の目がいいこと忘れたの？」
瞬間お互い組み合う。
力じゃ敵わない、と
なめらかに体を回して抜けていく戦い方に、
彼女そっくりだなと考えた。
………………選んでくれれば。
いらないことを考えるな、
そう思って思い切り拳をつく。
「惜しい」
ニコニコ笑う彼女のそれが、
強がりなのは一目瞭然。
まだ1分も経ってないのに汗はすごいし
息だって上がっている。
かつての彼女ならありえない。
「夏油くん、
なんか遠慮してんの？」
それでも煽ることを辞めないのは、
舐められないためか、
それとも弱みに付け入らせまいとするためか。
「…………帰る」
「はぁ？！」
彼女は私のセリフに、
眼前まで突き出していた拳を止めて目を見開いた。
「実は悟にここでの音声を丸流ししてたんだけど、
そろそろ帰ってきちゃう頃だからね。」
「げっ？！」
私あの人に言うなよ
って上からたくさん言われてるのに……
凄い表情でもんもんと考えている彼女を見て、
やっぱり表情があるのがいい。
そう思ってしまう。
生身の、そのままの心で、
私のところに来てくれたら。
「また迎えに行くよ」
「来ないで変態さん」
「まぁ、そう言わずに。」
ぢゅ、と首元を吸えば、
彼女はいった！？
と色気の欠けらも無い声をあげて。
「……はよ帰れ！」
しっし！と手のひらを振る。
きっと、気づいてすらないんだろうなぁ
とその姿が微笑ましい。
悟はこれだけでもブチ切れそうだから。
今日は私の勝ちってことで。
「じゃあね」
「…………もう来なくていいけど……
ありがと」
さいごにぽそりと告げられる言葉。
驚いて目を丸くする。
……あぁそうだ、
こういう細かいところでも、
ちゃんと気づいて、私を見てくれている。
でもそばには並んでくれない。
そういうふうな目では、決して見てくれない。
そんな所に惹かれていたんだと思い出す。
「絶対また行く」
「マジで来ないで？？」
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ワイヤー女 - 新さん» ありがとうございます！！とても励みになります！これからも是非ともよろしくお願い致します！ (2020年5月25日 16時) (
レス) id: cedc192f36 (このIDを非表示/違反報告)
新(プロフ) - めっちゃ好きです！！全てが好きです！！更新頑張れぇぇぇぇぇ！！！！！ (2020年5月25日 13時) (レス) id: e596ede8e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よく骨を折る田中 | 作成日時：2020年5月23日 18時
