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父上の言葉が脳内を巡って、
そして酸素は身体を巡ってくれない。
息が吸い込めなかった。
「お前たちがしたのはそういうことだ。
それでもお前は全て覚悟の上だった、そう言えるか?」
冷ややかな視線、威圧的な態度。
吐き気が止まらなかった。
「ならば、私が代わりに死にます」
息を吐き出すと同時にそう言葉を吐いた。
ジョングクだけは私の命に代えても守る。
城から逃げ出す前にそう誓った。
彼と少しでも一緒にいたい。
そう望んだ代わりに私が差し出せるものはこれぐらいしかなかった。
「…お前には、予定通り隣国に嫁いでもらう。
仕方ないからな」
仕方ない。
それは、私を殺さない理由。
そういう意味の仕方ないだった。
「ならば、尚更私は死にます」
私の言葉に父上は初めて黙り込んでみせた。
「私がいなくなれば嫁げる姫は他にいないでしょう」
他の姫は嫁ぐには、あまりにも若かったから。
「父様、約束します。
彼を助けてくれるのなら、私は大人しく隣国に嫁ぎます。
もう、一生彼とは会わなくてもいい。
…だから、」
その先の言葉が出なかった。
絶対に泣かないと決めていたのに。
もう彼とは一生会わなくてもいい。
そんな私たちの未来が脳裏をよぎって、涙が溢れてとまらなかった。
「…、だから、彼を助けてください。
父様。どうか、お願いします」
生まれて初めて、床に額をつけた。
ジョングクがこの世に生きていてくれること。
今の私が望むのはそれだけだった。
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作者名:ナノカ | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月31日 19時