3.先輩に質問 ページ3
ym.side
訳ありの先輩と筆談をした。
なんかだるくて保健室に行ったはずだけど、もう大丈夫だ。
山田『先輩は、なんでその、話さないんですか?病気とか?』
伊野尾「・・・」(また、聞かれちゃったな。でもちゃんと答えなきゃ。)
首をゆっくりと振りながらメモ帳を見せてきた。
そこには“病気じゃない。でも話さないわけじゃない、話せない。”と書かれていた。
俺にはよくわからなかった。話せないというのがどういうことか。
山田『いつからですか?』
“中学生の時、ちゃんとは覚えてない。少しずつ話せなくなっていった。”
山田『先輩のことを知る人はどれくらいいるんですか?』
“藪と光、大ちゃん、あと高木は知ってる。他は知らないと思う。”
山田『そう、なんですね。』
メモ帳には、すでに文が書かれていていつも聞かれる質問に答えられるようにしているみたい。
途中から先輩の心の声を聞いていいのかわからなくなって聞くのをやめた。
だって、話せないのには理由があるはずなのに、勝手に聞くのは悪いと思ったから。
山田『いつもどうやって、この人たちと会話してるんですか?』
俺はさっき見せられたメモ帳のページを指さした。
大ちゃんというのはたぶん有岡先輩のことだ。他はちょっとわかんないな。
“筆談と手話”
山田『手話使えるですか?』
元からちょっと興味あったからせっかくなら教えてもらおうと思ったんだけど
レベルが違いすぎた。
山田『あ、の、ごめん。もうちょっと遅くしてくれないですか?』
伊野尾「ww」(これでも遅い方なんだけどな。)
俺のことを馬鹿にするように、わからない手話を使い始めた。
ただ俺もいくつかはわかる。
例えば今、あほとかバカとかやってるってことはね!
山田『全部わからないわけじゃないんですし、手話だとしても悪口はよくないと思いますよ。』
伊野尾「っ!?」(まさかわかるとは・・・)
その後、いくつか手話を教えてもらった。
知らない間に帰る時間になっていて、保健室の前には俺の荷物が置かれていた。
山田『たぶん圭人だな。お礼言っておこう。あ、先輩の荷物は?』
先輩はすでに荷物を持っていた。中身が少なすぎるバッグを。
山田『これ、ノート1冊とメモ帳、筆記用具くらいしか入ってないですよね。授業は?』
“受けなくてもわかる。ちなみにテストの順位は6位だよ。”
ムカつくけど、これ絶対に何かあるな。
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作者名:百折不撓(ひゃくせつふとう) x他1人 | 作成日時:2023年1月29日 16時