Ability I (ページ49)

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４９. 屋敷ページ49

翔side

翔「じゃあ、行ってきます。みんな勉強頑張って」

みんなと言いながら雅紀の目を見てそう言うと

雅「うん！翔ちゃんも気をつけて」

と笑って返してくれた。

歩き出す前、ちらりと智くんの顔を見るとふにゃと笑って頷いた。

…まるで、翔くんなら大丈夫だと言うように

学園から電車に乗り、東京駅向かう
そこから西の方へひたすら電車に揺られること3時間…目的地の駅に到着した。

そこから歩くこと15分。
周りから一段小高い所に大きな門扉と塀が現れる。

が…その門から入ることはせず塀に沿って歩き、裏口から中へ入る。

屋敷に入り広大な庭を玄関に向かって歩き出すとすぐこの家の使用人が現れた。

「…当主様より顔も見たくないから挨拶はいらない。とのことですので、このままいつものお部屋へ。夕食は7時松の間でございます」

それだけ言うと俺の返事を聞くこともなく立ち去った。

言葉使いこそ丁寧だが、顔に表情はなく目が合うことも、まともにこちらを見ることもない。

使用人の俺を認識されない空気のように扱う反応も当主の顔も見たくないと言う言葉もいつも通り。

いつも俺はそのいつも通りにまだ終わっていないと現実を突きつけられる。

言われた通りいつも当てられる部屋に誰にも会わないことを願いながら向かう。

無事に部屋に辿り着くと襖を閉め一息吐いた。
ここは昔使用人が寝泊まりしていた板張りの小部屋。人1人寝るのが精一杯の広さで、窓がないので昼間でも薄暗くいつもじめじめと少しかび臭い。

でも、こんな部屋だからこそ誰も近づかないのだろう。この部屋に何かが仕掛けられていたことも見張られていたこともない。この家で俺が唯一気を休められる場所だった。

荷物を下ろし袴に着替え、何が起こるか分からないので自分で作った呪符を袖口や合わせに隠して入れる。武器の刀も術を使い符の中にしまってある。
そうする事で何も持ってないように見せながら万全の状態にすることが出来た。

翔「…あっ」

そこで、俺は智くんにもらった符の存在を思い出した。

荷物の中から札を取り出し中身を確認する。回復と基本的な水の術、あっ解術(かいじゅ)の札もある。そして…智くんの達筆な文字で書かれた“何かあったら連絡すること”と言うメッセージ

最後は…何これ？初めて見る札だった。
何の札か分からないと発動できないのでこの符は使えない。でも、置いて行く気にもなれずメッセージと一緒に袖口に入れる。