限界はない ページ10
目を開く。審神者部屋の見慣れた天井が目に入る。…昔よりもくすんで、汚れているけれど。
ガンガン痛む頭には冷えた手ぬぐいが乗せられていて、ひんやりとしたそれが心地良かった。
「…ぁ、ぁるじ、さん」
震えた声が入口から聞こえる。目をやると、乱がいた。髪の毛が元に戻ってる。やっべ今度こそ怒られっかも。
「ぁの、ボク…」
「…ん"、なに」
絞り出した声はカッサカサに掠れていて、喉が痛んだ。水飲みたい。あと喉飴舐めたい、できればハチミツ味のやつ。
大きなパステルブルーの両目に透明な涙を浮かべて、乱は唇を開いた。
「ごめんなさっ…ぐす、ボク、ボクは…」
「ぁー…おち、ついて」
頭を撫でてあげれば落ち着くかな、なんて思って手を伸ばすけれど、入口には届かなかった。
上手く身体に力が入らなくて、伸ばした手はぱたりと落ちる。
「みだ、れ。…ぉいで」
掠れ声でそっと呼びかけると、おずおずと乱が近づいてきた。やっべ本当に身体起こせないんだけど。
手前の横にしゃがみ込んだ乱の頭を優しく撫でてやった。
「！…ぁ、主さっ…！」
「ぅあっ」
ぱっと目を見開いた後、覆いかぶさるように抱きついてくる乱。咄嗟にその背中に腕を回して抱き止めた。肩がじんわりと温かくて、泣き止んでなかったのかと苦笑する。
痛いくらいに抱き締めてくる乱の背中を緩く抱き返せば、嗚咽が少し大きくなった。なんかごめん。
次の瞬間、突然襖が開いた。
「乱。あまり長居しては、主が…」
一期が少しやつれた顔で入ってきて、そのまま固まる。
「主…？」
乱は一期が入ってきたことに気づいてすらいないようで、手前にしがみついて泣きじゃくっている。少し苦笑しながらも片手をひらっと振れば、一期は持っていたお盆を落として飛び出してった。どうしたんだろ。
数秒も経たないうちにドタドタと凄い足音が聞こえてきて、肩が跳ね上がる。乱も今のには気づいたらしく、顔をあげて開いたままの襖を見た。
「主！」
「あるじさまぁ！」
ばたばた、と粟田口の皆が駆け込んできて、突然密集した審神者部屋は少し温かくなった。
「ぁ、けほっ…」
咄嗟に声を出そうとするも、何かが喉に引っかかって咳き込んで。慌てたように背中をさすってくれる乱の手が少しくすぐったくて。
なんだか昔の消えた思い出の中にいるみたいで、幸せだって思えた。
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碧 - 面白かったです！御体に無理がないように頑張ってください！ (4月13日 11時) (
レス) id: 75384074dc (このIDを非表示/違反報告)
？？？ - 更新楽しみにまってます。 (3月28日 18時) (レス) @page17 id: 66c9a050dc (このIDを非表示/違反報告)
天照(プロフ) - 面白かったです❗️更新楽しみに待ってます！ (1月4日 23時) (レス) @page7 id: aa210f3daf (このIDを非表示/違反報告)
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