栗田口の心の内 ページ9
倒れ込んだ人間をとっさに薬研が抱きとめる。
「たいしょ…？大将、おい！大将！」
乾いた柏手の音と共に光が栗田口の部屋を包み、粟田口派の刀剣達の傷は消えていた。その柔らかく、清らかな霊力には皆覚えがあった。
「ある、じ…？」
最初に呟いたのは鳴狐だった。
ぽろ、と乱の瞳から涙が溢れ出る。
「主、さん…」
青白い顔で薬研に支えられるその人間の腕は力なくだらりと垂れていて。かつて傷つけた、自ら捨ててしまった愛しい人間が目の前にいる。
…そして、またも消えようとしている。
「ぁ…主！」
だ、と一期が入口に駆け寄った。だらんと垂れ下がる白くて冷えた両手を包み込み、自らの霊力を流し込む。
「主、…どれほど、お会いしたかったか…」
もう苦しまぬよう。痛がらぬよう。救ってもらった分、今までの恩を仇で返してしまった分。
ゆっくりと慎重に霊力を流し込んでいれば、人間の顔に少し血の気が戻ってきた。それでもまだ呼吸は浅く、体は冷え切っている。
あまり揺らさないように薬研がその小さな身体を持ち上げ、ゆっくりと横抱きにした。
「いち兄、後で色々説明するから今は許してくれ」
「…」
思いつめた表情でこくりと小さく頷く兄の姿に少し顔を緩めた薬研は、己の主を抱く腕に力をこめて粟田口部屋を出た。
向かう先は審神者部屋。粟田口部屋は危険だ。きっと恋しかった霊力を感じた刀たちがすぐ押し寄せてくる。
人間に絶え間なく霊力を流し込みながらも、薬研は短刀ならではの素早さを活かして審神者部屋への道を進んでいた。
腕に感じる重みはほとんどなく、随分と細くなった主が消えてしまいそうで腕にますます力を込める。
少しでも温めてやれるように、温もりを与えてやれるように。
いつの間にか、薬研は泣いていた。
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碧 - 面白かったです！御体に無理がないように頑張ってください！ (4月13日 11時) (
レス) id: 75384074dc (このIDを非表示/違反報告)
？？？ - 更新楽しみにまってます。 (3月28日 18時) (レス) @page17 id: 66c9a050dc (このIDを非表示/違反報告)
天照(プロフ) - 面白かったです❗️更新楽しみに待ってます！ (1月4日 23時) (レス) @page7 id: aa210f3daf (このIDを非表示/違反報告)
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