痛みはない ページ8
「…薬研、ここに堕ちかけの刀はいる？」
「…ああ」
本丸に足を踏み入れた瞬間から瘴気が体にまとわりつく。気持ち悪い。ヤバい吐きそう。
「まだ誰も堕ちてはいないが…長谷部の旦那や、鶴丸の旦那がまずい」
「…ぱぱっと瘴気払いたいとこなんだけど…今の手前じゃ重症七振りが限界かも」
頭痛に加えて吐き気まで込み上げてきて、でも通常運転で何も無いふりをする。
あちこちから殺意を感じる。ここに人間がいるってバレてる。怖いって。本気で泣くよ？
「…ここに、いち兄たちがいる」
ボロボロの部屋。
中から殺気が溢れ出している。
…少し足がすくんだ。
「…開けるぞ」
す、と手前を守るように立って襖を開ける薬研。かっけぇ。
襖が開いた瞬間。ゆら、と一期が立ち上がった。
「…薬研、人間は皆殺せと言ったはずです」
「いち兄…」
水縹色の髪は半分紅に染まっていって、腕の皮膚が赤黒くなっている。頭が割れているのか乾いた血液が黒く額を染めていた。
「…そうだよ、薬研…」
ふら、と一期の後ろで影が揺らめく。
…乱？
「乱…違うんだ、この人は」
「薬研、また呪術にでもかけられた？」
長かった金髪はざっくり切られて、毛先が黒く焦げている。片目がなくて、黒い穴から真っ赤な血が溢れ出ていた。手前の髪の毛に怒るどころじゃなかったそっちのほうが酷いじゃん。
「あの時主さんを裏切っちゃったの、忘れたの？…ボクたちが信用して良い人間は主さんだけだよ」
その言葉を合図とするかのように、部屋にいた刀が全員立ち上がった。手前を色とりどりの瞳で睨み、次々と抜刀していく。
「お、おい！落ち着けって！この人が大将なんだ！」
「薬研兄さん…大丈夫です。…今すぐその人を殺して自由にしてあげます…」
五虎退が光のない両目をあげて手前を見た。ボロボロに刃こぼれした刀を握りしめて、手前に向ける。
…そろそろ本当に倒れそうなんだけどなぁ。
「…薬研、一瞬刀ちょうだい」
そっと耳に囁くと、困惑したような顔で短刀が手渡される。
…もっかい腕でいっか。かなりの量の血が必要になるし。
ぐさ、と勢いよく腕に刀を突き刺した。
「…！？」
ぼたぼたと血が床に滴り落ちる。もう全部めんどくさい。
体内に残った全部の霊力を使って、栗田口の皆だけでも治せるように。
柏手を打った瞬間、意識が遠のいた。
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碧 - 面白かったです！御体に無理がないように頑張ってください！ (4月13日 11時) (
レス) id: 75384074dc (このIDを非表示/違反報告)
？？？ - 更新楽しみにまってます。 (3月28日 18時) (レス) @page17 id: 66c9a050dc (このIDを非表示/違反報告)
天照(プロフ) - 面白かったです❗️更新楽しみに待ってます！ (1月4日 23時) (レス) @page7 id: aa210f3daf (このIDを非表示/違反報告)
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