恨みはない ページ5
じぃ、と薬研を観察してみる。
悲しそうな藤色の瞳は手前じゃなく、手前を通り越してどこか遠くを見つめている。濁りきった藤色。
…？
濁る？
おかしい。薬研の目はいつでも透き通って輝いてた。いくら病んでても光がなくなるだけでしょ普通。濁りはしない。
まさか。
嫌な憶測が頭に浮かんで、それを振り払うように声を出した。
「薬研、最後にもう一つ」
恐る恐る手をあげて、指を三本立てる。
「…これ、何本？」
「…っ」
答えずに視線を彷徨わせる薬研に、ほぼ確信した。
「君、もしかして目が視えないの？」
「…」
少し後退る薬研にこっちから歩み寄る。気配を察知したのか薬研は刀を手前に向けた。
「…それ以上近づくな。斬るぞ」
「…君に僕は、斬れないよ」
恐怖からかもう意識を失っているこんのすけをそっと地面に寝かせ、両腕を開いた。
薬研の両目を更に観察してみる。
「…一回目ん玉くり抜かれた感じー？」
「な…！？」
なぜ分かった、とでも言うように刀を握る手に力を込める薬研。そりゃ分かるわ。大将なめんな。
理由は分からないけど一度両目をくり抜かれたことで神経が切れて盲目になったんだろう。ならば手入れで治るはず。
少し勢いをつけて走り出した。
咄嗟のことに驚いた薬研が後ろに飛び退く。
刀を勢いよく振り下ろされた。今回は避けることはしなかった。
「…！？」
薬研が見えない瞳を見開く。相手の動揺を見逃さず、腕を掴んで地面に組み伏せた。
「！ひっ…は、離せ！嫌だ、離してくれ！！」
必死に暴れる薬研に心が痛むが、今はそんなこと気にしちゃいられない。手入れが優先だ。
本来ならば資源や手伝い札がないと手入れは難しい。でも手前はずっと鍛えてきたから、霊力と自分の血液だけで手入れができる。
薬研の手から本体を奪い取った。
「！？ぁ…いや、いやだ」
涙を流して懇願する薬研の頭を軽くぽんぽんと撫でた。
「落ち着いてよー、悪いようにはしないし」
泣きじゃくって怯えている薬研の上に馬乗りになったまま、短刀で右腕に傷をつけた。いってぇ。何回やってもダメだ慣れない。
ぽたぽた垂れる鮮血を左の手のひらで受け止め、息を吹きかけ霊力を宿す。その手のひらを薬研の心臓部辺りに持っていって、少し力を込めた。
ふわ、と白い清らかな光が薬研の体を包んだ。
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碧 - 面白かったです！御体に無理がないように頑張ってください！ (4月13日 11時) (
レス) id: 75384074dc (このIDを非表示/違反報告)
？？？ - 更新楽しみにまってます。 (3月28日 18時) (レス) @page17 id: 66c9a050dc (このIDを非表示/違反報告)
天照(プロフ) - 面白かったです❗️更新楽しみに待ってます！ (1月4日 23時) (レス) @page7 id: aa210f3daf (このIDを非表示/違反報告)
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