悔いはない ページ3
こぉ、と冷たい風が髪を荒らす。
いつもの和服じゃなく、政府の役人としてのスーツ姿で。
良く見慣れていたはずの門の前に立つ。汚れて錆びたそれに手を置くと、小さく軋んだ音をあげた。
「かぐ…A様」
「なーに」
一番最初にここに来たときとは違って、顔布はつけていない。顔を隠す物がない以上、真名を知られてしまえば手前はどうなるか分からない。
「スリル感があるねー」
のんびり言えば、こんのすけは眉を釣り上げた。
「A様は危機感がなさすぎるのです」
「良いじゃんか、人間皆いつかは死ぬんだし」
今死んでも数年後に死んでも、どっちみち死は逃れられない。
「だから手前は明日後悔しないように毎日楽しく生きてるんだよー」
「…こんのすけは、A様が心配なだけなのです」
すりすりとすり寄ってくるこんのすけを抱き上げ、後ろで控えている先輩の役人に小さく頭を下げる。
「お世話になりました」
「…最後みたいなこと言うなよ。絶対死なずに帰ってこい。じゃないとお前の分の書類増やすからな」
若干泣きそうな先輩にもう一つお辞儀をして、こんのすけにゲートを開いてもらう。
軋む門を開いて、中に足を踏み出した。
空間が歪む。白と黒で世界が染まって、眩しさから目を閉じた。何度やっても慣れないししんどいわこれ。どうにかなんないのかな。
やっと足元が安定してきて目を開くと、変わり果てた手前の本丸が目に入った。
あー…懐かし。
きっと前の審神者たちの物だろう、庭にも柱にも壁にも飛び散った血は乾ききっている。
本丸の結界はボロボロで、こんなんじゃ歴史修正主義者たちの格好の的だなぁなんて考えた。
放っておかれた審神者たちの遺体が腐敗したのか、異臭が凄い。現に、庭のあちこちには腐りかけた遺体やもう骨だけになった審神者たちが転がっている。
「…後で、連れて帰ってあげようか。ご遺族様のところへ」
そうこんのすけに問いかければ、小さく頷かれた。
手前がもっと早く来ていれば、こんなにたくさんの審神者たちが命を落とさないで済んだかもしれないのに。
ごめんなさい、と小さく手を合わせて冥福をお祈りした。
「お…？誰だ、アンタ」
聞き慣れた声が耳に入って、思わず顔を上げた。
「…薬研、？」
「新しい審神者か？見て分かる通り、俺っち達に審神者は必要ないんだ。…まぁでも見られたのなら生きて帰すわけにはいかないな。死んでくれ」
銀の刃がきらめいた。
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碧 - 面白かったです！御体に無理がないように頑張ってください！ (4月13日 11時) (
レス) id: 75384074dc (このIDを非表示/違反報告)
？？？ - 更新楽しみにまってます。 (3月28日 18時) (レス) @page17 id: 66c9a050dc (このIDを非表示/違反報告)
天照(プロフ) - 面白かったです❗️更新楽しみに待ってます！ (1月4日 23時) (レス) @page7 id: aa210f3daf (このIDを非表示/違反報告)
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