怒りはない ページ11
「あるじさま、あるじさまぁ…」
腰辺りにしがみついて泣くごこを優しく抱きしめる。他の皆は手前を囲むようにして泣いていた。ごめん手前が泣かせたのかな。
「ごめんな…、みん、な」
「ち、ちが…主、謝らないでくだされ…」
手前の背中を支えている一期が震える声で言う。
「全て悪いのは私たちです。主が謝ることなど、一つも…」
結局言えたのはそこまでで、後ろから肩に顔を埋めてきた。まさかあのいち兄が泣くとは…。
他の短刀たちは刀解でもされるみたいな雰囲気で泣きじゃくってるし、鳴狐はお通夜みたいな顔してるし。お供はなんか…手前の横で丸まってる。寝てんのか、これ。この雰囲気で寝るか普通。いや手前の霊力は落ち着くって前も言われたけどさ。だけどさ。
「ひぐっ、嫌だよ主ぃ…」
「大将…ぐす、」
包丁と厚が手前の右手を握りしめて泣いている。
「ぁの、さ…」
絞り出した声に、皆が顔を上げる。短刀たちの瞳に恐怖が浮かんだ。
「っ！主君、お願いいたします…！刀解は…、刀解だけは、」
前田が必死の形相で頭を下げる。…いやしないから。まさか本当に皆刀解されると思ってこんな雰囲気になってんの？しないからな？
「とぉ、かい…しない、から。泣き止め…」
怒ってないし、別に。皆は呪術に操られてただけであって、自分の意志で手前を捨てたわけじゃない。大体、手前が二年間育て上げた本丸だし。皆のこと嫌いになるはずないじゃん。
「…うそつき」
乱の押し殺したような声が、急に静かになった部屋に響いた。
「前に来た審神者さんたち、言ってた。…もう主さんはボクたちのこと嫌いなんでしょ。だから今まで来てくれなかったんでしょ。主さん優しいからウソ吐いてるのかもしれないけど、ボクたち皆知ってるよ」
…は？
「俺たちゃ、何度も政府に頼んだんだぜ。大将をこの本丸に、一度で良いから送ってくれないかって。少しだけ、ほんの少しだけで良いから話をしたいって」
後藤が震える声で言って、手前の頬をするりと撫ぜた。
橙色の瞳からすっと光が消えて、背中が冷たくなる。
「でもな？…来たのは皆、知らない人間だった。愛想笑いを浮かべて偽善に濡れた言葉を吐く、大将じゃない人間。だから殺した」
「っ、ぁ」
ぎゅう、と腕を掴まれ、痛みに思わず声が漏れる。怖い、こんな皆知らない。
「主君、分かってくれますか？僕たちみーんな、主君が大好きなんですよ」
秋田がにこ、と笑った。
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碧 - 面白かったです！御体に無理がないように頑張ってください！ (4月13日 11時) (
レス) id: 75384074dc (このIDを非表示/違反報告)
？？？ - 更新楽しみにまってます。 (3月28日 18時) (レス) @page17 id: 66c9a050dc (このIDを非表示/違反報告)
天照(プロフ) - 面白かったです❗️更新楽しみに待ってます！ (1月4日 23時) (レス) @page7 id: aa210f3daf (このIDを非表示/違反報告)
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