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薮side
伊野尾がピアノを辞めた。
あれだけの実力を持っていたし、注目も集めていた。なぜ辞めてしまったのかと朝からエンタメニュースを賑わせていた。
一番近くにいた俺ですら分からない。
だけど、一つ言えるのはあの日からピアノの音が隣から聞こえなくなった。
そして伊野尾に徹底的に避けられているのも確かだ。
俺には心当たりがさっぱりない。
だけど、このままじゃいけない。
そう思って声をかけることにした。
キノコ頭。見つけた
「伊野尾!!!!」
「っ、……なに」
伊野尾を呼び止めれば分かりやすく体をびくつかせてこちらを見た。
「ピアノ辞めたってどーゆーことだよ!!」
「どーゆーこともそーゆーこともねぇよ。まんまだよ」
「なんで、……お前あんなにピアノ好きだったじゃん。もう一回今ならやり直せる「うるさい!!」…っ、伊野尾?」
「誰のせいだと思ってんだよ!!俺はお前のせいで分かんなくなったんだよ!!」
「え、俺…?」
「俺は楽しくピアノを弾いて、薮が隣で笑って聴いててくれればそれでよかったのに、勝手に天才少年なんてレッテル貼られて、楽しかったはずのピアノもただの単純作業になって、何のために弾いてるのか分かんなくなってきて、そんな時にお前に彼女ができてそれだけならまだしも、お前は俺の気も知らないで彼女よりも俺を優先してみたり……お前や周りのせいで俺の気持ちも!!!人生も!!全部全部めちゃくちゃなんだよ!!
俺は、ピアノやってる意味が分かんなくなったら終わりなんだよ。俺にはピアノと……薮しかないんだから。両方一気になくしたら、人生の意味だって分かんなくなるんだって。俺は、薮みたいになんでも手に入れられる人間じゃないんだよ…もう、全部分かんないんだよ!!」
こんな風に思ってるなんて知らなかった。
こんな伊野尾も見たことなくて胸が苦しくなった
俺が当たり前だと思ってやっていたことも、良かれと思ってやっていたことも全部伊野尾を苦しめてたんだ
お前の方が苦しいのに、俺がこんな顔してたら駄目だよなと思って顔を上げればぼろぼろと涙を流す伊野尾と目が合った。
その瞬間伊野尾はずるずるとしゃがみ込んだ。
「あっ……ちが、ちがうの…」
「伊野尾、ごめん俺…」
そう言って伸ばした手はぺちりと叩き落されて、伊野尾が走り去るのをただ見つめることしかできなかった。
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いのてん(プロフ) - 更新とても嬉しいです!!甘々なのお話大好きなのでもっと読みたいくらいです笑ゆっくりでいいですし、いつまでも待ってるのでまた更新お待ちしておりますね(^ ^) (2019年8月16日 7時) (レス) id: 0789ee6158 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琳 | 作成日時:2019年1月23日 10時