ヒトリゴト。 (ページ29)

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中島side

｢伊野尾！？｣

ぼけーっと見とれてると先輩の後ろから聞こえてきた叫び声というかなんというか…

ていうか、いのお先輩って言うんだ…

｢大丈夫か？｣

｢うん！｣

｢も～、ほら立てる？｣

｢たてる！｣

｢よいしょ、っと…怪我ないね？尻もちついただけ？｣

｢だけ！｣

｢だから俺らも着いていくって言ったのに。……ほれ、半分持ってやるから。｣

｢じゃあ俺も。｣

｢はぇ、…って、おれのもつのない！｣

｢いーから、いくぞ。｣

｢あいばせんせー待ってる。｣

｢むぅ。…｣

｢拗ねるな笑笑｣

｢あっ、と……きみ、1年生だよね？｣

先輩たちのテンポのいい会話に空気と化していた俺。
急に声をかけられてふっと意識が戻ってきた。

やばい、今度こそシメられる……！！

｢君もけがない？ごめんね、いのちゃん前見えずに歩いてたから｣

あれ…？し、心配されてる？

｢あ、俺は全然大丈夫です！！！俺も余所見して歩いてたんでこっちこそすいませんでした！！｣

なんだかシメられる事しか考えてなかったのが申し訳なくなって腰を90度に曲げて謝った。

｢ははっ、お前面白いな笑笑｣

｢そんなに謝らなくて大丈夫だから笑笑まぁ、大丈夫なら良かった。またね。｣

｢あっ、はい！｣

そんなやり取りをしている間、当事者であるはずのいのお先輩はどこか他人事。
違うところに意識があるみたい。

ほら行くよ、と笑った時に見える八重歯が可愛らしい先輩に手を引かれてもなおぽやぽやしてた。

｢あっ、ほんとにごめんねぇ～｣

｢ほら、いのちゃんちゃんと前見て歩かなきゃ転けるよ。｣

2人に挟まれて真ん中を歩くいのお先輩の後ろ姿を見送る。

｢やばい、かわいい………｣

やばい、好きになっちゃった…