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食事を済ませて、少しの雑談の後教会に向かった。夜もそれなりに遅い時間になり、外も冷え込んできた。教会には暖房の類があるわけでもなく、冷や冷やとする中で大寿と二人並んで祈りを捧げる。
最初にここに連れてきて貰ったのは、彼と兄妹であると発覚した4後のクリスマスだった。クリスマスになると父が家を空けると知った大寿が、正和と父親に許可を取り連れ出すようになったのだ。正和としては、血を分けた兄妹なのだからわざわざ確認を取るまでもないだろうと思っていたわけだが、大寿は彼女の兄は正和だけであると、心のどこかで思っていたのだろうと思う。それは今でもそうだ。
Aは確かに自分の妹。大寿本人もそうだが、話を聞く限り八戒とゆずはも彼女のことを妹として受け入れている。八戒は自分が兄という立場になれたことに喜び、柚葉は女一人だったから妹が出来て嬉しいとはしゃいだ。大寿は戸惑いこそしたものの、自分よりもずっと小さな彼女を壊れ物を扱うようにして大事にしてきた。
しかし彼女には、もう既に兄がいた。それが桐生正和だ。大寿はその男には永遠に敵わないと思っているし、その男だけが彼女の兄だと思っていた。今でももちろんそうだ。しかし彼女は、自分のことも兄として思い、慕い、愛してくれた。それが何よりも嬉しいと感じられる程、柴大寿は家族の暖かみを知れるようになった。
「やっぱりここはいつ来ても雰囲気良くて落ち着く〜……寒いけど……」
「だからって潜ってくんな。」
お祈りを終えて、ずらりと並んだ椅子のひとつに腰掛けると、寒い寒いと言いながら膝の上に座りコートの中に潜り込む彼女にため息を着くと、「いーじゃんいーじゃん!」とにぱりと笑った。兄が居たとはいえ、特殊な環境で育った彼女は大人びていた。どちらかと言えば長女のようで、姉御肌とはちょっと違う。優しく包み込む、聖女のような雰囲気を纏っていた。下に兄弟がいる、と言われた方が納得するだろう。
しかし、兄である大寿や八戒、姉の柚葉がいれば、末っ子らしくそれに甘えてくれる。口ではやめろと言っていても、大寿だって満更でもないのだ。
「大寿くんあったか……」
「お前も寒いなんて言いながら、体温だけはいっちょまえに高ぇじゃねぇか。やっぱりガキだな。」
「未成年だもん。大寿くんはアラサーだもんね。」
「てめぇ……」
軽く頬をつねってやると、彼女は「いたいいたい」なんてへらへらと笑った。
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Liezabeth Gillies(プロフ) - 中高生が書くような文章ではなくしっかりとした文才があり安心して作品を楽しめます。ところで、どのような結末になるのでしょうか。着地点はどこに、、? (2021年12月1日 1時) (レス) @page43 id: f20a915395 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 面白くて一気読みしました!好き!応援してます! (2021年11月10日 19時) (レス) @page22 id: 1f03340a86 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみません、20話の『頭のおかしい練習に囲まれて』は『頭のおかしい連中に囲まれて』の間違いではないですか? (2021年11月8日 3時) (レス) @page20 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
まるきち(プロフ) - 文章力ものすごいのに、ギャグ線強くて好きです♡前編からずっと読んでます!花蛸花さんのペースで頑張ってください💪 (2021年11月7日 12時) (レス) @page21 id: 4a45715550 (このIDを非表示/違反報告)
結菜 - 好き、、なんで、こんな、作品作れるの??え?なんでこんなに、文才あるの?え?神様って不公平だね。てか、神様っているのかな?、、、あ、挨拶が遅れてすみません!結菜です!花蛸花さんの作品好きです!面白すぎて一気見しました!!! (2021年11月4日 18時) (レス) @page18 id: 05b53aed2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年10月30日 2時