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彼女の服は、外面のいい父親のおかげでそれなりにいい所の服だった。しかし、どれもこれも父親が適当に買ってきたものなので、正直彼女の趣味ではないしサイズが合わなかったりで結局ほとんど着ていなかった。それを聞いた蘭は、とりあえずサイズの合わないものを捨てて新しい服を買いに行くことにしたのだ。
初デートの行先は、もちろんショッピングモール。蘭の行きつけの服屋に入れば、店員たちが深々と頭を下げ、女の店員は目をハートにして輝かせたかと思うと、隣のAに目を向けた。背が小さいのにどこか大人びている彼女だが、やはりまだ子供っぽいところがある。
きょろきょろと店内を見渡す彼女を見て、蘭はくすくすと笑っていた。今まで自分たちに向けられたことない笑顔だ。しかし、そんなの当たり前である。蘭は彼女の腰をだき、「こんなの可愛いよ?」なんて服を手に取り始めた。それがどうにも気に触った女の店員が、にこにこと愛想笑いを浮かべて彼らに近づいた。
「お久しぶりです灰谷様!お隣の方は……もしかして妹さん?それとも親戚のお嬢さんかしら?」
嫌味ったらしいその言い方は、嫌という程彼女にもビシビシ伝わってきた。にたにたと笑って、あんたじゃ彼の隣に相応しくないのよと言いたげに見下ろしてくる。それなりに背も高くてスタイルもいい。さすがアパレル店員といった感じだった。しかし、蘭は先程までの笑顔はどこへやら、すんっと真顔に戻ると彼女をその女から遠ざける。
「お前、誰?新人?」
「え……い、嫌ですわ灰谷様!ずっとここに勤めていたじゃありませんか!何度かお洋服をお選びしたこともあるんですよ?」
「へぇ〜……ごっめん、わかんねぇわ。」
そう言うと、蘭はにこりと貼り付けたような笑顔を浮べる。笑っているのに、笑っていないような、そんな笑顔。
「で?どう見たら俺とAちゃんが兄妹に見えるのか教えてみろよ。てめぇの目腐ってんのか?節穴か?辞めちまえよアパレルなんて。どうせ大して仕事も出来ねぇだろ。」
蘭は彼女から視線を外し、しゃっ、しゃっ、と服のかかったハンガーを動かし、たまに服を手に取りながらそう言った。その女なんてまるで目にとめず、「これとか可愛くない?」と隣にいたAに、先程とは大違いなほど優しい微笑みで語りかけるものだから、Aも拍子抜けてしまう。さっき人殺しそうな笑顔してたやんけ。
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Liezabeth Gillies(プロフ) - 中高生が書くような文章ではなくしっかりとした文才があり安心して作品を楽しめます。ところで、どのような結末になるのでしょうか。着地点はどこに、、? (2021年12月1日 1時) (レス) @page43 id: f20a915395 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 面白くて一気読みしました!好き!応援してます! (2021年11月10日 19時) (レス) @page22 id: 1f03340a86 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみません、20話の『頭のおかしい練習に囲まれて』は『頭のおかしい連中に囲まれて』の間違いではないですか? (2021年11月8日 3時) (レス) @page20 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
まるきち(プロフ) - 文章力ものすごいのに、ギャグ線強くて好きです♡前編からずっと読んでます!花蛸花さんのペースで頑張ってください💪 (2021年11月7日 12時) (レス) @page21 id: 4a45715550 (このIDを非表示/違反報告)
結菜 - 好き、、なんで、こんな、作品作れるの??え?なんでこんなに、文才あるの?え?神様って不公平だね。てか、神様っているのかな?、、、あ、挨拶が遅れてすみません!結菜です!花蛸花さんの作品好きです!面白すぎて一気見しました!!! (2021年11月4日 18時) (レス) @page18 id: 05b53aed2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花蛸花 | 作成日時:2021年10月30日 2時