ここにおってよ【3】 ページ23
〔5年程前〕
西畑「こば」
タイミングがタイミングだったから、大吾くんの言わんとしていることはなんとなくわかった。
何か言われる前に、私から話したかった。
「アイドルを諦めようかなって…。グループにも所属したことないし、女優としてやっていくんだろうなって思うから」
西畑「……」
「…期待したらつらいでしょ？」
デビュー、とか。まだみえないくらい先のことだから。
追いかけるほど、つらくなるの。
西畑「……」
「…だから、その…」
ずっと黙っていた大吾くんは、やっとそこで話し始めた。
西畑「いつやったか、俺がジャニーズ辞めようか迷ってた時、こばはなんて言った？」
「……」
西畑「逃げないでって言った」
「…覚えてるよ」
西畑「大吾くんのやりたいことはここにあるのに、それやのにいなくなるのは逃げてるだけやって」
「……我ながらなかなか厳しいね」
大吾くんは首を振って否定した。
西畑「その言葉がなかったら、俺はこの仕事を続けられへんかった」
「そんなことないよ」
だって、知ってるから。
「流星の言葉があったから残ったんでしょ？」
大ちゃんがやめるなら俺もやめる。
…すごいよね。私は引き止めることしかできなかったのに。
西畑「そうやな、それも理由のひとつやな。…でもどっちかの言葉だけじゃきっとあかんかった。こばにも流星にも助けられた、それだけやで」
「…そっか」
力になれていたなら、嬉しい。
西畑「なあ、こば」
「なに？」
西畑「こばのやりたいことは、ここにあるんとちゃうん？」
「………」
西畑「歌、好きやんな？」
「…好きだよ。……ステージ、立っていたいよ」
西畑「じゃあ、…」
「でも、ソロは嫌なの。みんなと立ちたいの」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 349人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ソルト
| 作成日時：2023年3月30日 22時
