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三人の裁判官(イーサンside) ページ20

思いの外大きな音が院内に響く。数秒経っても警報器らしき音が聞こえない。矢張り無人の廃病院なのだろう。

誰の足音も聞こえないことに安心し窓枠に手をかけ反動をつけて飛び上がり足を乗り上げなるべく硝子片を垂直に踏むよう意識して何もない薄暗い床に降りると小さく音が弾けた。シャツと魔法瓶を鞄にしまい片足で更に細かく砕けた硝子片を隅の方へ追いやりさて改めて辺りを見回すと丁度私が入ったところは横に続く長い廊下の一端、目の前には同じく廊下が伸びており病室ではなく診察室が並んでいた。外はあまり綺麗ではなかったが中は年季があり所々頼りないものの掃除が行き届きている様子から悪い想像が働いた。いや、近々取り壊すやら新しく作り替えるやら何かがあり取り敢えず中を綺麗にしただけかもしれない。朝日を映す無限の廊下に背筋が凍った。器物破損、確実に新しく手にした職を失うことになるのは火を見るより明らかだ。

私の足は不意に慎重に廊下を進み始めた。鼓動が骨を叩く、革靴特有の高い音が鳴る瞬間息を潜め回りの様子を伺いまた歩き出す。決して暗くはない筈の室内が次第に影を落とし始めたような気がした。


進んで行くと、誰かの話す声がする。女性が一人と後は誰か、慈しむような話し方から警察官と家出少年、少女かもしれない。この角を曲がってすぐだろうか。――好奇心というのは、己が身を持って知ったがなんと厄介なものなのだろう、角に手をかけゆっくりと覗き込む。やけに白い肌の女の子と、その子を囲むようにし前後に佇む羽織物を着たこれもまた少女か、周りには私の割り方より随分と派手に割られたであろう破片の塵が幾つか散らばっている。白い肌の少女、あれはヘアスノーフラワー病だ。

警察官でない安堵と奇病持ちである少女への手当てに不法侵入の身も構わず走って声をあげた。

「待って!」

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すみれ。(プロフ) - 申し訳ございません、企画折りさせていただきます。 (2020年5月17日 10時) (レス) id: d26d96fde9 (このIDを非表示/違反報告)
ランラ - 更新させていただきます (2020年5月16日 20時) (レス) id: a91edda93c (このIDを非表示/違反報告)
氷浦メグ(プロフ) - 申し訳ございません。企画を降りさせて頂きます。 (2020年3月21日 23時) (レス) id: 3357bae399 (このIDを非表示/違反報告)
氷浦メグ(プロフ) - 作成中です。 (2020年3月4日 0時) (レス) id: 3357bae399 (このIDを非表示/違反報告)
氷浦メグ(プロフ) - 更新します。 (2020年3月3日 23時) (レス) id: 3357bae399 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:参加者一同 x他10人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2019年11月7日 18時

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